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インタビュー

橋渡しインタビュー

高齢者支援とまちづくりの二刀流 椛沢功太さん

2026年8月8日 | 2026年8月9日更新

 埼玉県飯能市を拠点に生活支援サービス「GIFT(ギフト)」を展開する椛沢(かばさわ)功太さん(43)は、介護保険の枠組みでは対応しきれない外出の送迎や買い物同行、さらには自宅の片付けまで行っている。長年、作業療法士(OT)として医療・介護の現場に身を置いてきたのに、なぜ制度の外で「商店街の店主」として歩む道を選んだのか。

商店街の店主で作業療法士の椛沢さん
商店街の店主で作業療法士の椛沢さん

 

30代で作業療法士デビュー

 同県所沢市生まれ。看護師の母と祖母の背中を見て育った椛沢さんにとって、高齢者の医療や介護は自然な進路だった。

 大学では福祉領域を専攻し、卒業後は訪問入浴を専門とする企業に就職。介護士として働きながら夜学に4年間通い詰め、30歳でOTの資格を取得した。在学中に結婚と長女の誕生という人生の節目を迎えた。

まちづくりの仲間たちと写る椛沢さん(左から3人目)
まちづくりの仲間たちと写る椛沢さん(左から3人目)

 その後、介護老人保健施設などで十数年、リハビリの第一線に立った。そこで直面したのは、「身体機能(ADL)の改善」と「生活の質(QOL)」の乖離(かいり)だった。

 機能が回復して自宅に戻れても、実際には思うように動けず、誰とも会わずに孤立してしまう利用者は少なくない。友人への面会や旅行といった、その人らしい人生の彩りは、今の公的制度の中では優先順位を下げざるを得ない。

 「人生の終盤に『最期はよかった』と思ってもらえる支援をしたい」。自分が身に付けた知識と技術を生かせば何とかなるかもしれないと考えた。

 作業療法士は「医師の指示の下で行われるもの」と定義され、開業権が認められていない。それでも保険適用外のサービスであれば独立できる。収入は減少するが、妻から「私も働いているし、やりたいことはやったらいい」と後押ししてもらって、2年前に独立を決断した。

 現在は、地域包括支援センターやケアマネジャーからの依頼が、引きも切らない。1人で運営しているため、やむを得ず依頼を断ることもある。人を雇うまでの余裕がないのが、目下の課題だ。

 

不用品がつなぐ「記憶の循環」

 椛沢さんのもう一つの顔が、飯能市の商店街にあるくらしの循環センター「フカダヤ」の店主だ。

「地域に愛されるお店になりたい」と笑顔を見せる
「地域に愛されるお店になりたい」と笑顔を見せる

 創業70年の老舗金物店をリノベーションしたこの場所で、椛沢さんは高齢者の自宅で不用となった生活用品や家具を引き取り、リサイクル販売している。 レトロな食器や重厚な桐たんすなど、現代では簡単には手に入らない品物が並んでいる。

 「家の中の物を捨てるのは忍びないが、フカダヤに並ぶのなら気持ちよく手放せる」。長年のケアの経験から生まれたこのアイデアは、高齢者の「生前整理」や「心の整理」の受け皿となっている。

 「持ち主の話を聞くと、すてきな思い出が詰まっている。捨てるのはもったいないし、次の世代に循環していければうれしい」。一点一点に宿る持ち主の思い出を聴き、次の世代へとつないでいく作業は、物品の売買の域を超えている。

雑貨が並ぶ店内
雑貨が並ぶ店内

 専門職としての伴走と、商店主としての居場所づくり。一見、真逆に見える〝二刀流〟の仕事は、椛沢さんの中で「地域を支える」という使命感に結びついている。超高齢社会における新たな専門職の在り方を、示しているのかもしれない。

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