2026年4月19日
※文化時報2026年3月6日号の掲載記事です。
淑徳大学客員教授の藤田佳子さんが、国際パネルシアター協会(仮称)の設立を目指し活動を開始した。パネルシアターは、不織布で作成した人形をパネルに貼り、話や歌で子どもたちを楽しませる視聴覚教材。表情や動きに応じてやりとりできることが大きな特長だ。藤田さんは「デジタル教材が全盛の今だからこそ、幼少期に手で触ってコミュニケーションを取る楽しみを覚えてほしい」と強調する。(山根陽一)
藤田さんは昨年9月、全国青少年教化協議会(全青協、理事長・服部秀世曹洞宗宗務総長)が主催する第49回正力松太郎賞を受賞した。パネルシアターを仏教教育や福祉活動に生かし、国内外の災害被災地でも活動していることなどが高く評価された。

藤田さんは教育ボランティアとして公演、制作、ワークショップなどを実践してきた。
だが、個人の活動で終わらせず、セミナーや研修会、資格制度などを体系的に整備して次世代に引き継ぐ狙いで、国際パネルシアター協会の設立を思い立ったという。
主な活動として講座、セミナー、研修会の実施▽国内外の講師、現地通訳、コーディネーターの育成▽教材の開発▽国内外の教育機関との連携▽普及活動のサポート事業―などを想定。パネルシアターの実演者や賛同者が連携し、普及や企画・開発などに取り組む組織づくりを目指す。
大学教授や特別支援学校の校長ら多くの有志と連携しているほか、淑徳大学をはじめ、大妻女子大学、帝京平成大学、佛教大学などで学生サークルの活動も行われている。
パネルシアターは1972(昭和47)年、浄土宗西光寺(東京都墨田区)の住職だった古宇田(こうだ)亮順さん(当時)が考案した。主に保育園や幼稚園に広まり、81年には古宇田さんが第5回正力松太郎賞を受賞している。

藤田さんと古宇田さんは77年に出会った。東京女子大学で心理学を専攻していた藤田さんが子ども向け教材の研修にたまたま参加したところ、パネルシアターを教えていたのが古宇田さんだったという。
「自分で描いて、作って、仕掛けを考える。それが楽しくて夢中になった。出来上がっている紙芝居や絵本とは違い、自分の手で三次元の世界を作れる教材は他にありません」。今も最初の感動を忘れない。
卒業後、児童館の職員を経て結婚。5年間米国に滞在して帰国した後、保育園などで勤務した。その後、古宇田さんの紹介で大乗淑徳学園で教鞭(きょうべん)を取るようになった。この48年間、パネルシアター制作や実演と関わってきた。
2005(平成17)年には、スマトラ島沖地震の被災地スリランカの幼児施設や仮設キャンプで、パネルシアターを使った心のケアを行った。海外での活動は12の国と地域、40回以上に及ぶ。
最近では23年にベトナムのハノイ教育大学主催の連続講座で講師を務め、24年、25年と、同国で研修会と公演を実施している。

「パネルシアターの題材は、日常生活の食べ物や遊びなどがメイン。絵を使うので、言葉が分からなくても通じるのも特長」と説明する。
国内では11年の東日本大震災の被災地を「パネルシアターキャラバン」として定期的に訪問。今年1月には浄土宗総本山知恩院(京都市東山区)や大本山増上寺(東京都港区)で研修会を行い、仏教系の幼稚園や子ども食堂などでの活用も推進している。
「今、幼児用のデジタル教材が数多く使われているが、手で触り、目を見て話して分かり合う、アナログの伝達方法が人間性を深めてくれる。パネルシアターを通して、世界の子どもたちとつながりたい」。そうした思いで、藤田さんは新たな組織づくりに臨んでいる。