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個性光る輪袈裟 唯一無二「共栄の織り」

2026年4月27日

※文化時報2026年3月17日号の掲載記事です。

 三重県四日市市の就労継続支援B型事業所(就B)=用語解説=「共栄作業所」(中村龍二所長)が立ち上げた仏教徒向け手織物ブランド「織りの郷」の製品が注目を集めている。鮮やかな色合いが魅力の輪袈裟(わげさ)や門徒式章、優しい手触りの聖典カバーなどが主力商品。商品に込められた思いに共感する愛用者は年々増加しており、利用者とその家族は、作業を通して社会参加できることに喜びを感じている。(佐々木雄嵩)

仏教思想に通じる

 「織りの郷」の商品は、染織家・城みさを(1913~2018)が1969(昭和44)年に提唱した「さをり織り」の手法で利用者10人が手織りした生地「共栄の織り」でつくられている。

(画像1:心のままに糸を選んで織機を操る利用者)
心のままに糸を選んで織機を操る利用者

 「さをり」には「差異を織る」という思いが込められている。均一性や規範に依存しない自由な織り、感性や偶然性、不ぞろいを肯定する点が特長だ。

 「布を織るのではなく、自分を織る」「自他の違いを慈しむ」とする価値観は、仏教の説く「空」や「諸法実相」の思想に通ずる芸術観と評価され、世界各国の十数万人以上に「SAORI WEAVING」として親しまれている。
 
 作業場を担当する支援員の花井みどりさんは「多様性を許容する『さをり織り』は、就Bとの親和性が高い」と指摘。織り機の構造もシンプルで、作業は「踏む」「通す」「打ち込む」の3ステップ。障害者が容易に習得できるという。

(画像2:作業を見守る中村所長(左)と花井支援員(右))
作業を見守る中村所長(左)と花井支援員(右)

 一方、織り方はシンプルでも、綿や麻、ウールなどさまざまな素材の糸を自由に使えるため、色彩や質感に利用者の個性が宿る。ルールも答えもない。織り手の気分や思い付き、力加減が反映され、唯一無二の製品が出来上がるのだ。

(画像3:作業所にはさまざまな素材・色合いの糸が用意されている)
作業所にはさまざまな素材・色合いの糸が用意されている

 花井さんは、多様な造形や感性を表現できることが「障害者の創作意欲を高める」と強調。福祉作業所などに「さをり」の思想を生かす動きが各地でも強まっているそうだ。

 利用者の家族は「心の赴くままに糸を選び、〝好き〟や〝幸せ〟を表現しながら社会とつながっていってほしい」と願い、わが子の作品が社会に広まっていくことに喜びを感じている。利用者たちも、自分の作品が手に取られるたびに無邪気な笑みをこぼしていた。

宗教者も後押し

 共栄作業所は2019年から、仏教徒に向けた商品展開を始めた。「共栄の織り」でつくった名刺入れやトートバッグを購入した寺院関係者から要望されたことがきっかけ。招待された報恩講で行った即売会の反響も後押しになった。ぬくもりある織物と込められた思想を評価するファンが、僧侶らの間に年々増えていった。

(画像4アイキャッチ兼用:性別・世代を問わない輪袈裟は多くのファンを持つ)
性別・世代を問わない輪袈裟は多くのファンを持つ

 浄土真宗本願寺派東海教区教務所(佐藤浩紹所長)は「実用性のある隠れた名品。僧侶も購入することで利用者の経済的一助となるほか、お寺と福祉施設との交流を起点とした地域社会のつながり強化も期待できる」として、共栄作業所の活動を応援している。

 本願寺派の僧侶から輪袈裟の存在を知り、今では愛用者となった真宗高田派光善寺(大阪市天王寺区)の釋信敬住職は、月替わりで新調していると明かし、その魅力を「仏教の本質が織られている」と強調した。月参りの際に着用すると話が弾むことが多く、門徒に笑顔が生まれることがうれしいという。

 また、所属する天王寺区仏教会(南谷恵敬会長)で紹介したところ、加盟する27宗派172カ寺の中にも購入者が広がったそうだ。利用者の持つ天賦の感性が織りなす作品は「優しさにあふれている」「使うほどいとおしくなる」と好評だ。

(画像5:門徒の声を反映してつくられた「聖典カバー」)
門徒の声を反映してつくられた「聖典カバー」

 中村所長は「『共栄の織り』は、作り手と使い手を互いに〝栄(はや)す〟織物として誕生した。縦糸と横糸が織りなす、人と人とのつながりの大切さを訴える一品。今後も皆を元気づけ、引き立たせる商品を目指したい」と話している。

 「共栄の織り」製品の購入はECサイト(https://kyoeinoori.raku-uru.jp)から。施設でも定期的に展示即売会を行っている。問い合わせは共栄作業所(059―322―1783)。

【用語解説】就労継続支援B型事業所(就B)

 一般企業で働くことが難しい障害者が、軽作業などを通じた就労の機会や訓練を受けられる福祉事業所。障害者総合支援法に基づいている。工賃が支払われるが、雇用契約を結ばないため、最低賃金は適用されない。

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