2026年5月7日
※文化時報2026年3月27日号の掲載記事です。
日本基督教団大阪教区は8日、大阪福島教会(大阪市福島区)で、精神医療・福祉の最新情報を専門家から学ぶ「心なごむ会」の公開講演会を開いた。精神科医でクリスチャンの石丸昌彦さんが「安心の源~不安と孤独を越えさせるもの」と題して講演。約40人が参加し、聖書の言葉を通じて不安の本質について学んだ。
石丸さんは北千住旭クリニック(東京都足立区)院長で放送大学名誉教授も務めており、柿ノ木坂教会(同目黒区)の教会員でもある。著書に『不安と孤独の処方箋―病の教訓、聖書のヒント』(日本キリスト教団出版局)などがある。
講演では「不安に対する感受性は人によって差がある」として、発達障害のある50代の女性患者がトランプ米大統領や冤罪(えんざい)事件などを巡る社会課題を「目の前の不安」と感じている事例を紹介。「彼女は間違っているのか。さほど不安にならない自分の方がどうかしているのではないか」と問題提起した。

その上で「不安そのものは悪くない。不安になるのには理由がある」と強調。痛みと同様、不安にも危険を避ける効果があることや、自律神経の反応として伝染しやすいことを、実例や学説を挙げつつ説明した。
また、聖書の中でイエスは「安心しなさい」と繰り返し告げる一方、弟子たちは不安だったことが読み取れると指摘。「イエスが一緒にいてくれても、不安はなくならない。それでも大丈夫だと思えることが大切」と説いた。
質疑応答では活発なやりとりが行われ、精神障害のある当事者の女性は「生産性で測られる資本主義社会の中で、役割が欲しいし役に立ちたいのに、それができない不安やつらさがある」と吐露。石丸さんは「きょう私の話を一生懸命聞いて質問してくれたことで、この場ができた。あなたがいなければ成立しなかったし、普段から生産性とは関係のないところで役割を果たしているはず」と応じた。

心なごむ会は日本基督教団大阪教区伝道委員会の活動で、1991(平成3)年に「心病む友と共に」という名称で始まった。孤立しがちな人を支える教会の働きを促しつつ、互いに慰め支え合う〝癒やしの交流〟を目指している。
毎月第3火曜の午前10時~正午に都島教会(大阪市都島区)で牧師と精神保健福祉士、精神障害のある当事者、家族らが勉強会を実施。精神医療や福祉に関する書籍を読み、感想を語り合って理解を深めている。
心なごむ会の世話人で都島教会牧師の井上隆晶さんによると、精神障害のある人たちは生きづらさを抱えて教会を訪れる機会が多い半面、教会側の受け入れ体制や障害への理解不足によって、定着しない傾向があるという。
井上さんは「当事者や家族らと一緒に勉強し、それぞれが苦しみを語り合うことで気付きを得られる」と活動の意義を語る。
心なごむ会に参加している精神保健福祉士の西川京子さんは「教会も悩んでいる。病気や障害を正しく知り、悲しみや苦しみを理解することで、共に生きる社会をつくりたい」と話している。