2026年5月10日
※文化時報2026年1月20日号の掲載記事です。
身寄りのない高齢者らの身元保証や死後事務、生活支援などのサービスを行う事業者で構成する業界団体「一般社団法人全国高齢者等終身サポート事業者協会」(全終協)が2025年11月26日に発足した。業界の健全な発展とサービス品質の向上を目的としており、その実現のため、正会員の審査基準は国が24年6月に策定した「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」を上回る厳格な内容としている。
高齢者等終身サポート事業は、参入規制が存在せず、契約内容の不透明性や利用者への寄付・遺贈の強要、事業者の経営破綻によるサービス不履行などのトラブルが発生し、社会問題化していた。
こうした状況を踏まえ、国はガイドラインを策定。全終協はこれを受け、有志7事業者による自主的な業界団体として設立された。
会員区分は正会員、準会員、研修会員、賛助会員の4種類とした。準会員については「国のガイドライン順守」を条件とし、正会員に対してはこれに11項目の独自審査基準を追加。入会審査も外部有識者を含めた審査委員会によって厳正に行う。

正会員審査を厳格化した理由について、黒澤史津乃理事長はこう話す。
「業界団体を設立するときは、加入団体の数を増やすことを大きな目標に掲げるべきかもしれない。しかし、この業界は依然として社会的信用が十分ではない現状がある。そこで、自主規制の観点から正会員審査をあえて厳しくした」
正会員の11項目の審査基準は、①事業内容②契約締結の方法・過程③利用者の判断能力低下時の体制構築④死後事務委任契約における預託金管理⑤医療行為等に関する本人意思の意向表明⑥解約に関する定め⑦個人情報の取り扱い⑧財務状況⑨寄付、遺贈及び死因贈与=用語解説⑩利益相反が生じることを防ぐ体制整備⑪死亡届出に関する体制整備―である。
いずれも重要な項目で厳しい審査基準だが、中でも注目されるのは⑩の利益相反防止を盛り込んだことだ。
終身サポートにおける利益相反とは、受注側(事業者)が発注側(利用者)を兼ねたり、発注側の意思決定に深くかかわることによって、発注側の利益を損なう可能性がある状況や行為を指す。

終身サポートでは事業者が利用者から寄付を受ける事例が少なくないが、これは利用者の利益を損なう可能性が高いとして、審査基準では原則禁止とした。
さらに、「事業者が、任意後見受任者を兼任する場合」「利用者が、施設等と契約をする際、事業者および事業者の関連法人等が当該施設等を運営している場合」など、やり方によっては不適切な利益相反に該当する可能性のある六つのケースを示し、正会員には不適切な利益相反を防ぐ体制整備を求めている。
原則禁止とはせず、「体制整備」にとどめたことについて、黒澤理事長は次のように説明する。
「私たちは利用者の人生そのものに寄り添い、その大切な意思決定に深く関わるので、何らかの利益相反関係は容易に起こり得る。利益相反を完全に排除しようとすると、現状では利用料が大幅に上昇し、利用できる人が限られてしまう。現段階で重要なのは『こういうことが利益相反になり得る』と認識し、その発生を抑止する体制を整えてもらうことである」
原則禁止としないのは中途半端と考える向きもあるかもしれないが、これまで外部からは分かりにくかった問題を事業者自らが開示し、改善に乗り出す意義は大きい。
今回の全終協設立に関し、もう一つ注目されたことがある。25年11月26日に開催された設立記念フォーラムを、厚生労働省が「後援」し、局長2人が祝辞を述べるなど、関係省庁からも担当管理職が多く出席していたことだ。

これは異例であり、行政が全終協を強く後押ししている表れである。行政の強い支援により、全終協の会員の増加と高齢者等終身サポート事業のさらなる拡大が予想される。
その一方で課題もある。同事業の事業者による業界団体がもう一つ設立されており、消費者にとって分かりづらく、不便な状況が生じているのだ。
この点について、黒澤理事長は「目指しているところは、もう一つの団体も同じはず。いずれは一つにまとまるべきで、それを実現することが私の次の役目」と語る。
信頼回復と健全な市場形成に向け、業界一体での枠組み整備が求められている。

【用語解説】死因贈与
財産をあげる人(贈与者)が死亡したとき、あらかじめ指定したもらう人(受贈者)に財産を移す契約。生前に双方が合意して成立し、効力は死亡時に発生する。遺言によって財産を遺す遺贈(遺贈寄付)は相手の同意が必要ないが、死因贈与は同意が必要。なお、生前に財産を移せば「生前贈与」になる。