2026年5月29日
※文化時報2026年4月21日号の掲載記事です。
身寄りのない困窮者の最期を誰が看取るのか―。認定NPO法人自立生活サポートセンターもやい(大西連理事長、東京都新宿区)は、ホームレスや生活困窮者の支援団体を対象とした葬送に関する調査結果を発表した。多死社会を迎え、血縁を頼れない人々の看取(みと)りが支援現場の課題となっていることが明らかになり、もやいは宗教者を含めた枠組みをつくるよう社会に提言する。(山根陽一)
調査は昨年1~10月、全国約100団体を対象に実施し、相談支援や炊き出し、緊急宿泊支援などに携わる40団体から回答を得た。活動の中で葬送を行っている団体は65%に上るが、継続して定着しているのは42.5%にとどまり、50.5%は継続していなかった。
継続していない理由を自由記述で聞くと「孤独死のため、警察や行政に任せるようになった」「仕組みづくりができていない」「生活保護の人は火葬を担うが、それ以外は家族との関係があり必ずしも行うべきではない」などの回答が寄せられた。
また、実際に行っている葬送に関する活動について内容を複数回答で尋ねたところ、火葬に立ち会う90%、葬儀86%、葬儀社に引き渡す62%、埋葬(納骨)を主催する52%―などだった。
課題については「協力者」が62%、「行政の理解」が57%、「法的知識の不足」が52%―などとなった。

宗教者との連携について聞くと「連携がある」と答えたのが66%。仏教では浄土真宗、浄土宗、真言宗、キリスト教ではカトリック、プロテスタント、バプテスト派などが挙げられ、供養や墓地の提供を安価にして、現場を支えていることが分かった。
自由記述では「葬送を行うことで、身寄りがない利用者に『いずれは同じように送ってもらえる』と安心感を与える」との声があり、葬送が孤独・孤立を防ぐ「生者のための支援」として機能している実態も判明した。
もやいは4団体からヒアリングも行った。
NPO法人やどかりプラス(鹿児島市)は、病気や死亡時の希望を記した「つながるファイル」を作成し、当事者と共有。理解のある葬儀社と連携し、合祀(ごうし)墓を決めている。
NPO法人・居住支援法人のわみサポートセンター(愛知県一宮市)は、地域の寺院と共同墓地や位牌(いはい)堂の運営を行っており、50人以上が遺言状を書いている。
NPO法人ワンファミリー仙台(仙台市青葉区)は墓地を運営し埋葬も行う。他のホームレス支援団体とも連携し、路上生活者らを供養する「しのぶ会」を毎年営み、居住から臨終まで一貫した支援に取り組む。
ホームレス支援活動の第一人者である奥田知志氏が理事長を務めるNPO法人抱樸(ほうぼく)(北九州市小倉北区)は、葬送を奥田氏が牧師を務める東八幡キリスト教会で実施し、遺骨を礼拝堂横の小さな部屋に安置。毎年行われる「偲(しの)ぶ会」では壁に遺影が掲げられ、参加者らが思い出話などを語り合う。

今回の調査で、有識者として検討会に参加した大正大学准教授で生活困窮者支援団体「ひとさじの会」代表の髙瀨顕功氏は、半数以上の支援団体が葬送を行っていることは注目に値すると指摘。「少子化が進み『おひとりさま』が増える中で、看取りだけでなく供養についても、血縁に頼れない人たちが増えている。調査はそうした人々の供養の在り方も示しており、今後の活動に期待したい」と語った。

もやいは調査を実施するに際して、目的や意義を周知する意味も込めたクラウドファンディング(CF)を24年10~11月に実施。349人から約326万円を集め、「死後の尊厳」への社会の関心の高さを裏付けた。
期間中には、もやいが共同運営する「結(ゆい)の墓」がある浄土宗光照院(東京都台東区)の吉水岳彦住職へのインタビュー、NPO法人抱樸(ほうぼく)理事長の奥田知志氏と一般社団法人「未来の住職塾」(同港区)理事の遠藤卓也氏の対談を配信した。

また、身寄りのない人の葬送をテーマにしたTBSラジオの番組やインターネットメディアに代表者が出演。CF終了後には、ジャーナリストの磯村健太郎氏、愛知大学教授の樫村愛子氏、関西学院大学教授の白波瀬達也氏、大正大学准教授で「ひとさじの会」代表の髙瀨顕功氏らが調査方法などの検討を重ねた。