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〈29〉高齢者施設で葬儀200件 学研ココファン

2026年6月11日

※文化時報2026年2月3日号の掲載記事です。

 学研ホールディングスのグループ会社で高齢者・介護施設運営の株式会社学研ココファン(東京都品川区)は、2024年10月に葬儀サービス「学研ココファンのお葬式『ここりえ』」を開始した。施設数業界1位、定員数業界2位とあって、直葬を含む受注件数が約1年で約200件に達している。居室内看取(みと)りに占める利用割合は4割にとどまるものの、遺族や入居者からの評価はおおむね良好で、現場スタッフの意識改革にも効果を生んでいる。

千葉市の施設の居室内で行われた仏式葬儀の飾りつけ(画像を一部処理しています))
千葉市の施設の居室内で行われた仏式葬儀の飾りつけ(画像を一部処理しています)

 葬儀事業を開始した背景について、ライフエンディング事業室の岡田寛昭室長代行は次のように説明する。

 「当社の主力事業であるサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の施設長を対象に実施したアンケートでは、ご入居者・家族からの相談内容の55%が葬儀関連だった。最も多いニーズに対して、事業として応える必要があると判断した」

 ここりえの最大の特徴は、「居室安置」を前提とし、葬儀と一体でサービス提供を行う点にある。長年生活してきた居室に遺体を安置することで、落ち着いた環境での別れの時間を確保でき、グリーフ(悲嘆)ケアの観点からも効果があるとする。

居室前に飾られたスタッフ制作のメッセージボード(画像を一部処理しています)
居室前に飾られたスタッフ制作のメッセージボード(画像を一部処理しています)

 近年は火葬場混雑の影響で安置期間が長期化し、安置場所や面会対応が課題となるケースも増えているが、居室安置であれば柔軟な対応が可能だ。また、居室内でのエンゼルケア=用語解説=や葬儀施行も可能で、宗教儀礼も居室内で行われている。

 葬儀施行は各施設近くの提携葬儀社が担う。同社独自の葬儀プラン採用を提携条件とし、地域密着型で機動力のある中小葬儀社を中心にパートナー網を構築している。

 販売面では、各施設へのパンフレット設置に加え、岡田氏自らが年1回開催される運営懇談会に出向き、入居者や家族に直接説明する方式を採っている。「葬儀は現場スタッフからは提案しにくい領域であり、説明役は本部が担う体制としている」という。

葬儀依頼は看取りの4割

 開始から1年で約200件という実績について、岡田氏は「決して十分な数字ではない」と率直に評価する。

 同社のサ高住では、退去者の約3割が逝去によるもので、そのうち約6割は居室内での看取りとなっている。200件は、居室内看取り件数の約4割で、過半数に達していない。

 岡田氏は主な要因として、全230施設のうち、運営懇談会での説明を終えた施設が60カ所余りにとどまっている点を挙げる。課題である一方、今後の伸長余地は大きいわけだ。

 約200件の内訳は、直葬が6割、家族葬が4割。直葬比率が高いのは、「入居者が高齢で参列者が少ないケースが多いことに加え、居室安置中にスタッフや他の入居者が見送ることで、簡素な形式でも十分と考える遺族が一定数いる」と分析する。

食堂に棺(ひつぎ)を運んで、スタッフや他の入居者と華やかにお別れをすることも(画像を一部処理しています)
食堂に棺(ひつぎ)を運んで、スタッフや他の入居者と華やかにお別れをすることも(画像を一部処理しています)
皆で作った紙製の花をたっぷり入れた(画像を一部処理しています)
皆で作った紙製の花をたっぷり入れた(画像を一部処理しています)

 施行場所は、火葬場併設斎場など施設外が中心だが、居室や共用スペースなど施設内でも約1割を占める。施設内葬儀はあまり行われていない現状では、特徴的な数字といえる。

地域在宅からの受注拡大視野

 ここりえ利用遺族や入居者からの評価はおおむね良好で、「スタッフや他の入居者に見送ってもらえてうれしかった」「最後のお別れができてよかった」などといった声が寄せられている。

 現場スタッフへの波及効果も見逃せない。岡田氏は「居室安置中に家族とスタッフが故人を囲み、自然と会話が生まれる。その中で、『あなたがいてくれたおかげで母は最期まで幸せだった』と感謝され、退職を思いとどまったスタッフもいる」と明かす。

 2期目の重点施策として、①ここりえ対応可能エリア内全施設での施行②居室内看取りからの依頼割合を6割へ引き上げ③地域在宅(ケアマネジャーや介護施設)からの受注強化―の3点を掲げる。

 施設が執り行う新たな葬儀の形として、「ココファンの施設葬」がどこまで広がるか注目される。

 塚本の目:僧侶手配は家族葬の4割

 宗教者対応についても聞いた。葬儀形態は家族葬が4割、直葬が6割だが、僧侶を手配した割合は、家族葬全体のうち約4割、直葬では約1割にとどまる。

 僧侶の手配先は、菩提寺6割、ここりえ手配4割。ここりえ手配では、僧侶紹介サイトを活用し、お布施は炉前法要が一律3万円、一日葬は6万円(交通費1日5千円)としている。

北九州から駆け付けた僧侶による読経(画像を一部処理しています)
北九州から駆け付けた僧侶による読経(画像を一部処理しています)

 施設内は火器を使用できないため、電子ろうそくや電子・電池式線香になってしまうが、宗教者から否定的な意見は今のところない。宗教者からの助言で印象的だったのは、「出棺時にお香をひつぎの中に納める代替案がある」との提案があったことだという。

 遺族からは、「菩提(ぼだい)寺にお布施の額を尋ねても『お気持ちで』と言われ困る。やりとりを代行してほしい」との相談もある。

 

【用語解説】エンゼルケア

 葬儀などに際し、遺体の顔色や表情を整える「エンゼルメイク」を中心とした死後のケア。「逝去時ケア」とも呼ばれる。

 

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