2026年6月17日
※文化時報2026年5月12日号の掲載記事です。
認定NPO法人ハピネス(京都市南区)は、少女たちのシェルターや子ども食堂の運営などを通じて孤立支援に取り組んでいる。経営するカフェの収益を運営費に充てているが、頼りとなるのが寄付金。NPO法人などに寄付できる京都府のふるさと納税の制度「ふるさと×NPO京どねーしょん」の対象となっており、理事長の宇野明香さん(44)は「5万円の寄付でも、実質負担は2千円ほど。納税枠を支援に役立ててほしい」と話す。(大橋学修)
「これ誰のかばん? もう自分の家みたいに思っているんだから、ほんとに!」
ハピネスの拠点「アンドハピネス」の閉館前に、宇野さんの声が響いた。隣の公園に遊びに行った子どもが、かばんを置きっぱなしにしている。いつもの放課後の風景だ。

昼間は、地域住民が利用するカフェを営業。独居高齢者の居場所にもなっている。また、子ども食堂を週3回開き、生活が困窮していたり親の介護をしていたりする子どもたちを見つけて、支援につなげている。
別の場所では、何らかの理由で家庭の中で安心・安全に過ごすことができない少女たちが暮らすシェルター「ハピネスハウス」を開設している。
ハピネスハウスでは、中高生から20代の青少年が入居。共同生活をしながら自立を目指せるようにしている。心配事や悩み相談を受け付け、必要に応じて弁護士や行政につなげる取り組みも行っている。
虐待で3歳のときから養護施設への入退所を繰り返していた高校生は、施設内での人間関係や施設職員からの過剰な圧力に悩み、リストカットや過呼吸で病院に運び込まれることもあった。ハピネスハウスの存在を知って家を飛び出し、ようやく高校生らしい生活が送れるようになったという。
宇野さんが活動を始めたのは、自身が育児放棄されていたためだ。3歳のとき、ギャンブル依存症の母がアルコール依存症の男性と再婚。家庭内では、毎晩のように口論と物が壊れる音が響いていた。14歳のときから、年齢を偽ってアルバイトをするようになった。17歳のときに母がくも膜下出血で急死。時を同じくして父が失踪した。妹と2人きりの生活を支えようと必死で働き続けた。

20歳での結婚が転機になった。義父母に温かく迎え入れられ、子どもを授かったときは、義母が腹帯を用意し、子育て祈願に同行してくれた。宇野さんは「人生で初めて安心感や充足感を覚えた」と振り返る。
同じマンションに住む同世代の母親たちと子育てを助け合い、語り合う日々を過ごすうちに、「頼れる人がいることが、こんなにも心を軽くするのだ」と感じた。そして、孤立している子どもや親に安心感を届けたいと思うようになった。
宇野さんは2016(平成28)年から、仲間と共に地元の公民館「唐橋文化教育会館」(同区)で子ども食堂を開くようになった。3年間で行政からの補助金が交付されなくなるルールを踏まえて、19年にNPO法人を設立。同時にシェルターも開設した。23年に一帯の再開発で交流施設が新築され、その運営者にハピネスが選ばれたことで、現在の場所に拠点を移した。
運営経費を稼ごうと、カフェの経営も始めたところ、地域の自治連合会長から高齢者の居場所にもしてほしいと求められた。遺影の撮影会やエンディングノートの作成といった高齢者向けのイベントも開くようになった。
シェルターで生活する子どもたちやひきこもりの若者たちの就労支援にも取り組むようになり、職業体験や企業との顔合わせを行っている。
悩みの種は運営資金。年間5600万円ほどの支出に対して、カフェ経営などの事業で得られる収入は年間2600万円余り。単年度ごとに交付先が決まる日本財団などからの助成金は2400万円余りで、寄付金は450万円ほど。収入の約半分が不安定な財源になっており、24年度は約80万円の赤字になった。

京都府職員で中間支援を行う浄土宗光忠寺(京都府亀岡市)住職の齋藤明秀さんは、個人がふるさと納税で寄付する方法のほかに、企業や団体が寄付金を損金算入することで、寄付金の4割が納税額から控除されることを強調。「今年は年間収益がはっきりしてくる12月に、ふるさと納税に支出できる枠を確認することを忘れないで」と呼び掛けている。