2026年6月21日
※文化時報2026年5月1日号の掲載記事です。
生活困窮者支援などに取り組む認定NPO法人抱樸(ほうぼく)(奥田知志理事長、北九州市八幡東区)は4月18日、神戸市中央区の神戸ポートオアシスで奥田理事長の全国巡回講演会「おんなじいのちツアー2026」を開いた。特定危険指定暴力団・工藤会の本部事務所跡地(北九州市小倉北区)に開設する福祉施設「希望のまち」の建設に至るまでの地域との葛藤について語った。(大橋学修)

奥田理事長は、日本バプテスト連盟東八幡キリスト教会牧師。関西学院大学1年生のときに支援活動に参加したことがきっかけとなり、1988(昭和63)年12月から路上生活者の支援に取り組むようになった。
講演では、多くの人が支援されることを拒否しながらも、路上生活から脱却しようと考えるようになったことを伝え、「人と出会い、関わり合う中で人は変わっていく。希望とは可変性を信じることだ」と話した。
一方で自立支援の課題は、目の前の人を見ることなく、半年後に変化した姿を想像していることだと指摘。2004(平成16)年に公設民営のホームレス自立支援センターの開設にこぎ着けたが、自立できない人を不適格者とする目線があることに気付いたと振り返った。
「変わらなくても生きているということに普遍的な価値を置くことが必要だ」と考え、切り出されたままの木である「樸」をそのまま抱えることを表す「抱樸」に、団体名を変更したという。

そうした価値を共有した人々が、地域全体で当事者を受け止める「抱樸村構想」をまとめ、15年に「抱樸館北九州」(同市八幡東区)を開設することに決めたが、地域住民の反対運動に遭った。教会が反対を訴えるのぼり約100本に取り囲まれ、8カ月で17回の説明会を開いたが、理解を得られなかったと明かした。
希望のまちは今年1月に起工し、10月の稼働に向けて工事が進む。奥田理事長は「今日、生きていることを感謝できる場をつくる。人は変わるという思いと、変わらなくても人は生きるという思いが混在する場所になる」と語った。
相愛学園学園長の釈徹宗氏、編集者・ライターの青山ゆみこ氏との鼎談も行われ、人の変化や支援の姿勢が話題の中心になった。

青山氏は、困りごとを言語化することの難しさに触れ、「困っていることが言葉にならなくても、その場にいるから、困っているということが分かる。場所があることが大切だ」と話した。
釈氏は「困っている人のことが分からないと認めることが、尊厳を守ること。問題を解決するのではなく、苦労を1カ所に留めずに、皆で話し続けることで納得していく」と話した。
奥田理事長は、古代ギリシャの概念に、時間を定量的に扱う「クロノス」と、主観的に捉える「カイロス」があることを示し、「現代人はクロノスで生きている。その時が来なければ分からないカイロスの視点で、相手の時が来るのを待つことが大切だ」と話した。