2026年6月26日
※文化時報2026年5月26日号の掲載記事です。
血縁を超えた新しい〝家族〟の形をつくりたい。地域全体で子どもを育て、真心でつながって協力し合えば、現実のものになるのではないか―。京都府長岡京市の真言三宝宗勝龍寺(國定道晃住職)が、そうしたコミュニティーづくりを目指して活動を始めた。今月6日には「寺子屋いのちのたね」と題した多世代交流のイベントを開催。同市内外から約30人の親子が訪れ、境内や本堂に幼い子どもたちの笑顔があふれた。(松村一雄)
活動の基盤となっているのは、同寺の國定晃淳副住職の妻、KAMICO(國定真希)さん(40)が2021年に立ち上げた市民団体「neoseed(ネオシード)」だ。地球環境やアート、社会福祉をテーマに掲げ、多様な人々が交差するプラットフォームとなることを志している。
「子どもはいい種を持っているので、その種が花を咲かすには環境が大切。学校にはないそういう場所を作りたかった」と、KAMICOさんは話す。
背景には、画一的な学校教育で可能性を狭められている子や、生きづらさを抱える子が希望を見いだせないことへの強い危機感がある。
「寺子屋いのちのたね」では、何かを教えるわけではなく、正解も求めない。「自分で感じて表現し、対話しながら創造力を培ってほしい」。そして大人たちは、わが子以外の子どもたちにも分け隔てなく、優しい視線を注ぐことを心がける。
参加者は最初に境内を掃除して場を整え、本堂で般若心経を唱えて心をしずめる。その後はお絵描きをしたり、楽器を鳴らして音遊びをしたり、昼ご飯の準備を手伝ったりと、それぞれが思いのままに楽しい時間を過ごす。
大阪府高槻市から参加した仲里侑真さん(10)は「知らない子もいて気まずいこともあるけど、楽しい」と色鉛筆を走らせた。妹でお絵描きが好きな華彌さん(6)は「新しい友達ができそう。また来たい」と母親の顔を上手に描いていた。

勝龍寺を友人に教えてもらって初めて訪れたという髙谷美樹さん(39)は「普段の生活でお寺に関わることはない。お寺は入りにくいし、寺子屋をやっているというイメージはなかった」と明かす。
勝龍寺は、境内にまつられている布袋尊にちなんだマルシェ「勝龍寺ほてい市」を隔月で5年以上開いており、地域に親しまれてきた。
これまで子どもと大人が共に学び、楽しめる催しは開いてきたが、「寺子屋いのちのたね」は今後、月に1度開いていきたいという。

KAMICOさんは「ママが〝孤育て〟にならないように地域とつながるきっかけをつくり、お寺を活用して人の出入りを活発にしていく。街中にあるお寺をコミュニティーの中心にして、次の世代にバトンを渡すのが役割」と、次の展開も見据えている。
各地では子育てに悩む母親の支援や、子どもの第3の居場所(サードプレイス)づくりに注目する寺院が増えつつある。勝龍寺がまく「いのちのたね」は、宗教が社会の中で果たすべき新たな役割を象徴している。