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「排除なき森」を都市に 曹洞宗僧侶と連携

2026年7月5日 | 2026年7月6日更新

※文化時報2026年6月2日号の掲載記事です。

 障害の有無にかかわらず、全ての人が同じ空間を分かち合う社会の実現を目指す市民活動団体「インクルーシブ・フォレスト」(東京都稲城市)が、曹洞宗僧侶と連携した活動に乗り出している。「私たちが不自由なく安心して遊び、子育てできる場をつくりたい」と話す代表の赤池直子さん(42)は、重度知的障害のある長男を持つシングルマザー。坐禅や遊びを取り入れたワークショップで、違いや個性を生かし合う場を創出している。(山根陽一)

障害は環境の不備から

 4月18、19の両日、東京都渋谷区の代々木公園で開催された地球環境を考える国内最大級のイベント「アースデイ東京」。出展した多くのNPO法人や団体に交じり、インクルーシブ・フォレストは年齢や障害、立場や背景を超えて全ての人が過ごせる「インクルーシブ・プレーパーク」を展開した。

 アウトドア用品メーカーの協力でおむつ替え、授乳、カームダウン(落ち着き)ができるケアテントを設置。医療的ケア児=用語解説=の対応もできるようにしており、多くの家族連れが安心して利用していた。

(画像2:カームダウンできるケアテント)
カームダウンできるケアテント

 公共空間には、中央に仕切りを設けて寝転べないようにした「排除ベンチ」が増えるなど、障害者や生活困窮者が過ごしにくい状況ができつつある。赤池さんは「障害は障害者が起こすのではなく、周囲の環境の不備から生まれる」と、インクルーシブ・プレーパークの意義を話す。

 内閣府が出した2025年の障害者白書によれば、国内の身体障害者は423万人、知的障害者は126万人、精神障害者は603万人。赤池さんは「障害者を孤立させないためには、まず知ってもらうことが重要。健常者と同じように笑ったり泣いたり、喜んだり悲しんだりするのだと分かってもらうために、こうした機会を増やしたい」と強調した。

「やまゆり園事件」が契機

 赤池さんがこうした活動を始めたきっかけは、16(平成28)年に起きた相模原障害者施設殺傷事件=用語解説。わが子が殺されたように感じるとともに、子どもに対する自分自身の態度を見直した。

(画像2:カームダウンできるケアテント)
長男と過ごす赤池さん

 「当時、言うことを聞かない子どもにつらく当たっていた。今の基準だとハラスメントだったかもしれない。でもあの事件で、この子は私が守り、誰もがかけがえのない命を持っていることを知らせたいと思うようになった」

 その後、子育ての方針などを巡って夫と離婚。障害のある長男と障害のない次男を育てていく決断をした。

 21年10月には地域で見つけた仲間たちと共に、「排除なき森」を意味する「インクルーシブ・フォレスト」を設立。障害のある子もない子も大人も、一緒に遊びながらケアを循環させる場づくりを目指している。

宗門の理念「遊び」で体現

 今回もアースデイ東京に「Earth禅堂」を出展した曹洞宗は、人権擁護推進本部などの若手僧侶ら約20人が参加し、インクルーシブ・プレーパークの活動にも協力した。

 法衣姿の僧侶たちが椅子坐禅や匂い袋づくりのワークショップを実施したほか、子どもたちと皿回しやフラフープに興じる姿を、保護者らが笑顔で見守った。

(画像3アイキャッチ兼用:「アースデイ東京」で曹洞宗僧侶が協力した匂い袋づくりのワークショップ=4月18日、東京都渋谷区の代々木公園)
「アースデイ東京」で曹洞宗僧侶が協力した匂い袋づくりのワークショップ=4月18日、東京都渋谷区の代々木公園

 「自分の責任で自由に遊ぶ」をモットーに、外でのさまざまな遊びを提案し運営するNPO法人プレーパークせたがや(東京都世田谷区)も加わり、宗教が持つ「結節点(ハブ)」としての可能性も示した。

 インクルーシブ・フォレストの活動に協力することについて、曹洞宗総合研究センターの宇野全智研究員は「持続可能な開発目標(SDGs)=用語解説=を掲げ、誰一人取り残さない宗門である私たちにとっては当然」と話した。

 宇野研究員はインクルーシブ・フォレストが9月に行う講演会に講師として招かれ、「どう生きれば豊かに生きられるか」をテーマに、仏教の教えを説く。

(画像4:「協力するのは当然」と話す宇野研究員)
「協力するのは当然」と話す宇野研究員

【用語解説】医療的ケア児

 人工呼吸器や胃ろうなどを使用し、痰(たん)の吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常に必要な児童。厚生労働省によると、2021年度時点で全国に約2万180人いると推計されている。社会全体で生活を支えることを目的に、国や自治体に支援の責務があると明記した医療的ケア児支援法が21年6月に成立、9月に施行された。

【用語解説】相模原障害者施設殺傷事件

 2016(平成28)年7月26日未明、相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で、元職員の植松聖死刑囚が入所者19人を刺殺し、他の入所者24人と職員2人に重軽傷を負わせた。植松死刑囚は事件前から障害者を差別する発言を繰り返していたとされる。20年3月に横浜地裁で死刑判決が言い渡され、植松死刑囚は自ら控訴を取り下げて確定。22年4月に再審請求を行った。

【用語解説】持続可能な開発目標(SDGs)

 2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標。15年に国連本部で開かれた「国連持続可能な開発サミット」で採択された。17の目標と169の達成基準からなり、誰一人取り残さないことを目指している。

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