2026年7月7日
※文化時報2026年6月9日号の掲載記事です。
鹿児島市の浄土真宗本願寺派妙行寺(井上從昭住職)と柏原神社、カトリック谷山教会などでつくる谷山宗教連盟は5月29日、同市と「大規模災害時における施設の使用等に関する協定」を締結した。施設提供にとどまらず、管理運営責任と費用を市が負うという踏み込んだ内容となっており、全国への波及が期待される。(大橋学修)
鹿児島市にとっては初の宗教界との災害時協力協定。締結式は、鹿児島市役所で行われ、下鶴隆央市長と代表幹事を務める井上住職のほか、宗教者の災害支援に詳しく協定締結の協議や草案づくりに関わった稲場圭信大阪大学大学院教授らが出席した。
協定によるとそれぞれの宗教施設は、被災者への一時避難場所の提供▽遺体安置所の設置▽車両の緊急退避場所の提供▽ボランティア活動の拠点開設―などを行う。これらの支援活動で発生した費用は、災害救助法に基づき市が負担する。
下鶴市長は、災害時の初動体制が整うことに感謝した上で、今後も宗教施設と連携を取りながら災害への対応力を高める意向を示した。井上住職は「今後は施設ごとに覚書を交わし、防災や避難などの訓練や学びも充実させていきたい」と話した。

稲場教授は「全国の自治体と宗教法人の連携における新たな基準を提示したといえる」と、今回の協定を高く評価した。
谷山宗教連盟は昨年4月、地域の発展への寄与や緊急時の支援を目的に結成された。同年8月には、鹿児島市の和田川が氾濫した台風12号水害で、妙行寺の門徒会館が一時避難所やボランティア拠点となった。
この経験を生かそうと、谷山宗教連盟は今年2月、地域住民と避難所運営ゲーム(HUG)などを行う研修会を開催。翌3月には妙行寺が宗派を超えて災害支援を考える研修会を開催し、ボランティアの組織化や被災者のケアなどを学ぶ機会を提供した。
こうした取り組みが、行政に負担を求める協定内容であるにも関わらず、早期に締結に至る後押しとなった。井上住職は「雨の時期を前に締結できたことはありがたい」と語り、稲場教授は「協定締結がゴールではなく、これからの具体的な取り組み、備えを進めていくことが大事だ」と期待を寄せた。