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〈30〉単身高齢者支援契約が年々増加 川崎市社協

2026年7月10日

※文化時報2026年3月3日号の掲載記事です。

 全国の市区町村社会福祉協議会における身寄りなし・単身高齢者向け終活支援は、終活講座や相談窓口などに留まるケースが多い。一方で、見守り、死後事務、入退院支援など具体的サポートに踏み出す社協も徐々に増えている。その一つが、社会福祉法人川崎市社協(川崎市中原区)である。同社協が展開する「川崎市未来あんしんサポート事業」は、国のモデル事業の一つとして位置づけられており、その動向は関係者から注目されている。

 川崎市社協が2022年10月に開始した「未来あんしんサポート事業」のサービスの柱は、①生前見守り②死後事務③遺言作成支援・執行の三つ。別途有償で、入院・入所支援など六つのサービスも用意している。

 契約は、この3本柱をセットで行う仕組みで、単発での利用は受け付けていない。その意図について、川崎市社協あんしんセンターの菅茂生終活支援担当課長は「生前から死後まで一貫した安心を提供するという理念に基づいている」と説明する。

 

菅担当課長が講師を務め「てくのかわさき」で行った出張講座=川崎市高津区
菅担当課長が講師を務め「てくのかわさき」で行った出張講座=川崎市高津区

 

遺言執行報酬を預託金化

 サービス対象者は、「川崎市在住で原則65歳以上」「葬儀や埋葬を行える親族がいない」「公正証書遺言により遺言執行者を指定できる」など、八つの条件を設定している。

 「先行する社協と比べると条件は緩やか」と菅担当課長。例えば親族要件は、「直系親族がいない人」に限定する社協もある中、同社協では、親族がいても実質的に頼れない場合は対象になり得る。また、収入や資産の上限も設けていない。

 サービス費用は、①入会金2万円②年会費9600円③預託金60万円以上④事務管理費。③の内訳はA遺言執行報酬充当分30万円、B葬儀・埋葬費用30万円~、C家財処分・その他支払い・オプション1万円単位。④は預託金B C合計額の10%に設定している。

 他社協と比べ特徴的なのが、遺言執行報酬を後払いではなく預託金としている点だ。「契約者が亡くなった際、預貯金がない、あるいは借金が判明し、報酬を支払えないケースも想定される。遺言執行者に安心して業務にあたってもらうため」とする。

川崎市社協が入居している市総合福祉センター=川崎市中原区
川崎市社協が入居している市総合福祉センター=川崎市中原区

 預託金Bの葬儀・埋葬費用は、契約者が希望する葬儀社や埋葬先から見積書を取り、その金額を預託金としている。見積額が30万円未満の場合は、死亡後に預託金との差額を遺言執行者に返金する。

 実際の見積額は、葬儀は直葬、埋葬も費用の安い方法を希望する人が多いことから、20万円程度が最多となっている。

 

契約件数は想定上回る

 新規契約件数は、22年度(半年間)は0件だったが、23年度9件、24年度25件、25年度(10カ月間)34件と年々増加し、3年4カ月の累計で68件となった。

未来あんしんサポート事業の受付カウンター
未来あんしんサポート事業の受付カウンター

 相談件数は、終活相談全体で累計566件。「未来あんしんサポート事業」単独の集計は行っていないが、「7~8件の相談のうち1件が契約に至る」という。

 契約に至らない要因は、「三つのサービスのうち一つだけ利用したい」「それだけの預託金を負担できない」など、相談者のニーズと合致しないケースが最も多い。

 そうした状況を踏まえつつ、菅担当課長は「契約件数は想定より多い。契約者にとっては重大な選択であり、68人もの利用者がいる事実を重く受け止めている」と語っている。

 

塚本の目:寺院は協働する好機

 市区町村社協の中で、経済的に中間層に位置する人々への具体的支援に踏み出す動きが増えてきている背景には、身寄りなし・単身高齢者の死後を民間事業者だけで支えることが、費用面・収益面の制約から難しく、制度のはざまに置かれてきたという現実がある。こうした状況を受け、国が身寄りなし・単身高齢者支援や死後事務を含む包括的な支援をモデル事業として整理し、後押しを始めたことが大きい。

終活相談室
終活相談室

 しかし、この流れは宗教の役割を置き換えるものではない。むしろ、死後事務が制度として整備されることで、寺院が「死の意味」や「供養」を担うという本来的な役割が、より明確になると筆者は考える。その意味で、社協の動きは寺院にとって協働の好機であり、すでに「社協が死後事務を担い、寺院が葬儀・納骨を受け持つ」といった連携も生まれている。

 協働を検討する際の参考として、死後事務など複数の具体的支援を行っている社協を、筆者が把握する範囲で挙げておきたい。

 北海道本別町社協、東京都足立区社協、同杉並区社協、同文京区社協、千葉県船橋市社協、相模原市社協、神奈川県秦野市社協、同南足柄市社協、名古屋市社協、大阪府枚方市社協、大阪市城東区社協、高松市社協、福岡市社協。

 

 

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