2026年8月30日
※文化時報2026年7月24日号の掲載記事です。
日本財団(尾形武寿会長、東京都港区)は4日、東京都内で「第3回知的障害者インクルージョン実践セミナー2026」をオンライン併用で開催した。障害者支援施設をテーマに内外の専門家が講演やパネルディスカッションを行い、福祉関係者ら約千人が視聴した。(山根陽一)

最初に37カ国の知的障害者と家族を代表する団体「インクルージョン・ヨーロッパ」のチーフ・エグゼクティブ、ミラン・シュベジェバ氏が欧州の知的障害者施設の現状や課題を解説。知的障害者は施設から地域社会への移行による「脱施設化」を目指すべきだと提言した。
その理由として、施設での生活はスタッフと関わるのみで社会から隔絶された環境に身を置くことになり、本人を孤立させ、人生を制限することになると主張。「自分の家に住み、友達がいて、自分で決断し得意なことがあるという環境を、各国政府が提供すべきだ」と進言した。
欧州連合(EU)では施設で暮らす障害者が140万人以上に上る一方、英国では1970年代から知的障害者施設の閉鎖が始まり、北欧諸国も大規模施設を閉鎖・縮小して、地域に根差した住まいと支援に置き換えてきたと説明した。
独立行政法人国立重度知的障害者総合施設「のぞみの園」(群馬県高崎市)の古川慎治理事は、国が施設に求める役割・機能として、利用者の意思・希望の尊重▽地域移行の支援▽地域生活を支えるセーフティーネットの構築▽入所者への専門的支援や生活環境の向上―を挙げた。その上で「本人がさまざまな経験を積んだ上で、最後は本人が決める仕組みをつくれれば」と話した。
社会福祉法人博愛会(大分市)の釘宮謙悟副理事長は、家族や通所の利用者、地域住民が困ったときに頼れる「次世代型入所施設」を目指す試みを紹介。夢をかなえる支援として農業やネイルアート、アイドルとの遭遇などユニークな取り組みを行っていると伝えた。
また、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)=用語解説=を実施し看取(みと)りや終活にも積極的に取り組んでいると強調。「悪いのは施設ではなく『施設性』。困り事に合わせて住まいの選択肢がある状況をつくりたい」と力をこめた。
パネルディスカッションでは元厚生労働省障害者雇用対策課長の小野寺徳子氏が司会を務め、日本の入所施設の未来をテーマに登壇した3人と議論を深めた。第4回同セミナーは9月19日、「グループホーム」をテーマに開催される。
【用語解説】アドバンス・ケア・プランニング(ACP)
主に終末期医療において希望する治療やケアを受けるために、本人と家族、医療従事者らが事前に話し合って方針を共有すること。過度な延命治療を疑問視する声から考案された。「人生会議」の愛称で知られる。