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個の課題、お寺で解決 ラブグリーン家族支援の会

2024年10月6日

※文化時報2024年8月6日号の掲載記事です。

 NPO法人ラブグリーン家族支援の会(濱田由美代表理事)が、浄土宗浄相院(畑中芳隆住職、埼玉県川口市)で交流の場を運営している。寺庭婦人の畑中智栄美さんら約10人が担い手となり、市教育委員会や市社会福祉協議会と連携。家族や子どものあらゆる課題に取り組む。家族ではなく個人の問題として対応するケースが増えてきた昨今は「少しでも居心地のいい時間を、お寺でつくれれば」と考えている。(山根陽一)

公民館より気軽に

 6月19日、浄相院で開催された「親子サロン~はじめの一歩」。乳児を持つ親たちが情報交換し、子育てを経験したラブグリーンのスタッフから助言を受けた。

 自己紹介をした後、スタッフで保育士の市川美恵子さんが、わらべ歌を交えて母親と赤ちゃんがより親密になる方法や無理のない接し方を教えた。「育児の悩みは誰にでもある。家族形態はさまざまで正解はないが、ここで気持ちを吐露して共感できれば、気持ちが上向くはず」と語った。

(画像①アイキャッチ兼用:「親子サロン~はじめの一歩」で交流する乳児の母親たち=6月19日、埼玉県川口市の浄相院)
「親子サロン~はじめの一歩」で交流する乳児の母親たち=6月19日、埼玉県川口市の浄相院

 離乳食の始め方や、夏場の体調管理の留意点などを説明したのは、保健師の安達智里さん。「浄相院はとてもアットホーム。公民館などより気軽に来られると思う」と話す。

 生後6か月の女児を抱え、夫とともに参加した池田千絵さんは「同年代のお母さんと交流し、さまざまな発見があった。今は育児で休業中だが、基礎を学んでから、安心して仕事に復帰したい」と笑顔を見せた。

お墓の問題にも対応

 ラブグリーン家族支援の会は、2023年にNPO法人になる前から10年以上にわたって活動してきた。代表理事の濱田さんが、民生委員として30年以上も地域の問題に取り組んできた経験を生かして設立。育児だけでなく、生活全般について気になることを自由に話せるサロンを定期的に開催している。

 「当初は育児や不登校、介護などを家族の問題として考えてきたが、今は家族の概念そのものが崩れているので、個人それぞれの問題として対応している」。濱田さんはそう話す。

(画像②ラブグリーン家族支援の会のスタッフ。左から丸山さん、濱田さん、寺庭婦人の畑中さん)
ラブグリーン家族支援の会のスタッフ。左から丸山さん、濱田さん、寺庭婦人の畑中さん

 シングルマザーや子どもの貧困、ヤングケアラーからお墓の問題―。各家庭が抱えている事情は多種多様だ。

 だからこそ、事前の手続きなどが必要なく、ふらりと立ち寄れるお寺の長所が生かせると考えている。お寺ならではの対応として、「新興宗教に入った夫と同じ墓に入るのを拒んだ妻から悩みを聞き、別の霊園を紹介するケースもあった」という。

 スタッフの丸山明美さんは「ひな祭りや端午の節句、お墓で肝試し―などと季節の行事を行うことで、心を柔らかくしてくれるのもメリット」と指摘する。

クルド人との交流課題

 ラブグリーンの特徴の一つは、教育行政や公的機関と連携し、さまざまな情報やノウハウを共有していることだ。若い行政職員からも頼りにされており、サロン開催時には多くの行政・福祉関係者も参加する。

(画像③住宅街にある浄相院)
住宅街にある浄相院

 川口市社協の精神保健福祉士、藤田舞唯さんは「ラブグリーンの催しは温かくて内容が濃い。他の団体の参考にもなる」と語る。 

 川口市は、トルコの少数民族クルド人など海外からの移住者が増えてきたことで、地元住民との軋轢(あつれき)が表面化している。行政はさまざまな対応を取っているが、市民レベルでの交流はなかなか進まない。

 濱田さんは「外国人が日本文化になじむのは難しいし、お互いに疑心暗鬼になっている側面があるだろう。だが、今後は多様性がますます広がり、在日外国人の相談に接する時が来るかもしれない」と予測する。

 寺庭婦人の畑中さんは「保護司を務める住職は、ラブグリーンの活動を全面的にサポートしてくれる。お寺としては、地域に開かれた身近な存在となり、日本の伝統行事を残していきたい」と語った。

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