2026年7月4日
色を見るものは形を見ず、形を見るものは質を見ず
――夏目漱石(1867~1916)

夏目漱石の代表作の一つ『虞美人草(ぐびじんそう)』に登場する一節です。
この言葉には、見た目に引かれる者は本質的な構造を見落とし、形にこだわる者は物事の真価を見失ってしまうという意味が込められています。
仏教において「色」とは単なる色彩ではなく、私たちが感覚で捉える形あるもの全般を指します。
色や形は常に変化するものですが、私たちはついこれに執着しがちです。
人や物を見た目で判断したり、変化していくと知りながらも「このままでいてほしい」と願ったりすることがあるでしょう。
仏教には「色即是空」という言葉があります。
この世のあらゆるものには実体がなく、本質は常に移ろいゆく「空」であるという考え方です。そして、執着から解放されることで、苦しみもまた和らいでいくとされています。
さらに、この言葉には「空即是色」という続きがあります。これには、「空」であるからこそ、全てのものが色や形を持ち、存在することができる、という意味が込められています。
物事の本質を見るためには、表面上の色や形に捉われてはいけません。しかし、その色や形に美しさを感じることは、人間だからこそできることです。
また、色や形をより美しくしようとこだわる人間の情熱にも、大きな価値があります。
物事の一面だけではなく、多角的な視点で世界を見渡してみてください。
今の自分にとって本当に大事なものを探すには、色も形も質も全てが大切です。多くを知り、考えて生き続ければ、この世に無駄なものなどなくなるでしょう。