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悲しみ語り合おう グリーフケアのマルシェ開催

2025年12月21日

※文化時報2025年10月28日号の掲載記事です。

 兵庫県宝塚市の真言宗単立寺院平林寺(今井弘道住職)と塔頭(たっちゅう)の大覚寺派成福院(同)で13日、グリーフ(悲嘆)ケア=用語解説=をテーマにしたイベントが開かれた。身内を亡くした寺庭婦人がケアの意義を知ってもらうために企画。4回目を迎えた今年はキッチンカーによるマルシェを新たに加え、講演会やコンサート、ライティングなど多彩な催しを行った。家族連れら大勢の人々が来場し、喪失感や悲嘆について理解を深めた。(奥山正弘)

寺カフェで心のケア

 イベント「マルシェdeグリーフケア」は、成福院を拠点に活動している「こころのケアの会」が主催した。テーマは「触れて、聴いて、味わって」。グリーフケアについて学んだメンバーが、大切な人や物を失った悲しみについて語り合い、ケアを知ってもらおうと開いた。

 同会の代表を務めるのは、寺庭婦人の今井薫さん(63)。上智大学グリーフケア研究所で2年間学び、臨床傾聴士=用語解説=として認定を受けた。

(画像1:今井住職(左)と寺庭婦人の薫さん=兵庫県宝塚市の成福院)
今井住職(左)と寺庭婦人の薫さん=兵庫県宝塚市の成福院

 さらに、心のサポートを必要としている人に専門的なケアを提供するスピリチュアルケアワーカーを目指して、NPO法人日本スピリチュアルケアワーカー協会の養成講座を受けている。

 日々、檀家の話を聞く中で終活の必要性を認識し、終活カウンセラーになった。2008(平成20)年、在宅介護していた住職の祖母を看取(みと)った。このことをきっかけに、グリーフケアに感心を持つようになった。

 ケアの講習で看護師や子どもを失った女性と知り合い、20年に3人で語り合いの場「寺カフェ」を立ち上げた。毎月1回成福院で開いており、心のケアが必要な人が安心して過ごせる場づくりに取り組んでいる。

 「皆、心につらい思いを持っているのに、話す場がなく、受け止めてくれる人もいない。そんな状況を解消するお手伝いができれば」と薫さん。「心のつらさは寺カフェのような安心・安全な場所で吐き出し、少しでも前を向いて進んでほしい」とエールを送る。

「亡きいのち」に思い

 「マルシェdeグリーフケア」は、兵庫県が地域づくり活動に取り組む団体を助成する2025年度「阪神北☆夢づくり応援事業」に決まった。昨年は地元宝塚市の支援を受けており、粘り強い活動で行政側の認知が広がり、後押しを受けるようになった。

(画像2:「いのち」について話し合う田中さん(左)と前田さん=兵庫県宝塚市の平林寺会館)
「いのち」について話し合う田中さん(左)と前田さん=兵庫県宝塚市の平林寺会館

 講演会は平林寺境内の平林寺会館で行われた。兵庫県三田市の心療内科クリニック院長、田中章太郎さんと、同市のノルディックウオーキング部キャプテン、前田信道さんが「いのち」について話し合った。田中さんは母を亡くした悲しみを振り返り、「私自身グリーフに悩んだが、人に話をすると癒やされた」と語った。

 亡くなった赤ちゃんをしのび、家族に思いを寄せる「ピンク&ブルーリボン運動」のライティングは、夕闇迫る午後5時から成福院駐車場で行われた。

(画像3アイキャッチ兼用:「ピンク&ブルーリボン運動」のライティング=成福院駐車場)
「ピンク&ブルーリボン運動」のライティング=成福院駐車場

 ピンク&ブルーリボンは、妊娠中や出産後に赤ちゃんを亡くし、深い悲しみの中にいる家族を支え、グリーフケアの重要性を社会に呼びかける国際シンボルマーク。「心穏やかに過ごせるように願います」。シンボルカラーのピンクとブルーの明かりを包んだ紙袋に、参加者のメッセージが手書きされた。参加者は明かりを囲み、静かに心を寄せるひとときを過ごした。

 たこ焼きやおにぎりなどのキッチンカー5台が集結したマルシェは午前11時から、成福院駐車場で店開き。コンサートはシンガー・ソングライター、Salia(サリア)さんが弾き語りライブを行った。今井住職も「月夜とめがね」と題する紙芝居を上演した。

(画像4:キッチンカーが出店したマルシェ=成福院駐車場)
キッチンカーが出店したマルシェ=成福院駐車場

「開かれたお寺」へ

 成福院は文化時報社が設立した一般財団法人お寺と教会の親なきあと相談室(小野木康雄代表理事、京都市下京区)の支部を昨年4月、兵庫県内で初めて設立した。「開かれたお寺」を目指し、同財団が全国の支部に開催を呼びかけている「親あるあいだの語らいカフェ」をはじめ、「歌と法話」や写経体験などのイベントを定期的に催している。

 今井住職は「先祖回向だけではなく、仏教とご縁を結んでいただく取り組みを行い、敷居が高くない寺づくりを進めたい」と抱負を話す。

(画像5:イベントが開かれた平林寺会館)
イベントが開かれた平林寺会館

 一方、平林寺会館は毎月1日、午前7~10時ごろまで「平林寺がひらいてる朝」と題して市民に開放されている。お茶やコーヒーが提供され、来場者は座談会のような雰囲気で住職の法話を聞く。近隣住民がコミュニケーションを深める貴重な機会で、終活や福祉、宗教などの本を自由に読んでくつろげる場にもなっている。

 問い合わせは成福院(0797―71―0838)。

【用語解説】グリーフ(悲嘆)ケア

 大切な人との死別など喪失を体験した人が悲しみや苦しみを乗り越え、自分らしい新たな人生を歩み出すためのサポート。適切なケアが受けられないと、精神的なストレスが蓄積し、身体的、社会生活にも影響を及ぼす可能性がある。

【用語解説】臨床傾聴士(りんしょうけいちょうし)

 傾聴を通じてグリーフ(悲嘆)やスピリチュアルペインに寄り添う専門職で、上智大学グリーフケア研究所が認定する独自資格。龍谷大学や武蔵野大学などにも養成プログラムがある。宗教者である臨床宗教師に対し、一般のケア実践者が認定される。

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