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ひきこもり・不登校 当事者の声を届ける雑誌好評

2026年3月18日

※文化時報2026年2月10日号の掲載記事です。

 ひきこもりの当事者・経験者と支援者らでつくる季刊誌『SHIP!』が話題になっている。ひきこもり、不登校、生きづらさや社会課題を考え、当事者の視点から当事者の声を届ける雑誌だ。誰もが手に取れるよう紙媒体での発行にこだわり、第3号からは全国の書店でも販売。最新の第4号は京都で発売記念イベントが行われた。(主筆 小野木康雄)

大垣書店でイベント

 発売記念イベントは2日夜、京都市北区の大垣書店本社で開催。発行人でジャーナリストの池上正樹さん(63)と、同じく発行人でひきこもり経験者の上田理香さん(54)によるトーク&サイン会が行われ、約20人が訪れた。

 池上さんは約30年にわたってひきこもりに関する取材を続けており、数千人の当事者と関わってきた。トークではまず、自身が子ども時代に場面緘黙(かんもく)=用語解説=だったことを明かし、取材で同じような若者と出会って「放っておけない」と感じたことが、活動の原点になったと明かした。

(画像アイキャッチ兼用:発売記念イベントでトークに臨む池上さん(右)と上田さん)
発売記念イベントでトークに臨む池上さん(右)と上田さん

 取材を始めた当初は当事者の話が記事になることは珍しく、「同じような境遇の人がいることを知った」「自分も話を聞いてほしい」といった反響があった。今もさまざまな声が寄せられている。

 大人の当事者にインタビューすると、多くの人がいじめ被害など学校時代の経験が尾を引いているという。池上さんは「『親に心配をかけたくない』などと普通を装うことで心が壊れ、大人になってからひきこもる人は多い」と指摘した。

100%被害者支える

 もう一人の発行人である上田さんは、小学4年のときに凄絶ないじめを受けたことを打ち明けた。仕事で忙しい母親に、絞り出すように「あした学校に行きたくない」と伝えると、理由を聞かずに「行かなくていい。休みなさい」と言われたことが、命を救ってくれたという。

 いじめの被害者がなかなか声を上げられない背景には、①加害者からまた何かされるのではないかという恐怖心②恥ずかしさ③「いじめられた方も悪い」という周囲の誤った対応―があると指摘。特に3点目に関しては「いじめは犯罪。100%被害者の側に立ち、『あなたは悪くない』と言い続けてほしい」と訴えた。

 また、周囲に相談することで傷つくこともあると強調。「忘れられずに苦しんでいる人に、『忘れた方がいいよ』という言葉は凶器に近い。相談されたら『よく言ってくれたね』と伝えてほしい」と呼びかけた。

既成概念を打ち破る

 「見えなかったもの、失われた声に光を当てる」

 2025年4月に発行された『SHIP!』創刊号の巻頭言のタイトルだ。

(画像:『SHIP!』第4号。特集は「いじめ後遺症と大人のひきこもり」)
『SHIP!』第4号。特集は「いじめ後遺症と大人のひきこもり」

 池上さんと上田さんは「競争社会からこぼれ落ちた途端、私たちは居場所を失い、自らの存在すら消してしまおうと、社会から身を潜め、孤立を深めてしまう」とつづり、多くの当事者たちを照らして声を届ける必要性を説いた。

 「ひきこもりながら、生きづらくとも、生きることをあきらめなくていい、誰もが自分はひとりではないと思える共生社会をめざしたい」。そのように徹底して本人を尊重することを誓い、「私たちは、未来の大海原に一筋の光を照らす『SHIP!』でありたい」と宣言した。

 元々は、NPO法人KHJ全国ひきこもり家族会連合会(東京都豊島区)の会報が出発点。当事者家族から「当事者に寄りすぎている」と批判されて廃刊に追い込まれたが、編集長を務めていた池上さんと当事者らが「何とか継続したい」「せっかくだから書店で買える雑誌を出したい」と創刊した。

 創刊号の特集は「既成概念を打ち破る」。従来のひきこもり支援の限界を超えようと企画した。第2号「『生きづらさ』を生み出す正体」、第3号「学校問題とひきこもり」を経て、第4号は「いじめ後遺症と大人のひきこもり」。精神科医の斎藤環さんや、いじめの傷跡を抱えながら生きる2人の当事者へのインタビューなどを収録した。

 内閣府の推計では、15~64歳でひきこもり状態にある人は全国で146万人。池上さんと上田さんは「ひきこもらざるを得なかった人たちの声を、これからも届けていきたい」と話している。

 『SHIP!』は定価1100円(税込み)。定期購読やネットワーク会員も募っている。問い合わせは一般社団法人SHIPひきこもりと共生社会を考えるネットワーク(070―2647―2167、shiphiki@gmail.com)。

【用語解説】場面緘黙(ばめんかんもく)

 家庭では話せるのに、学校や職場など特定の場面では緊張や不安から声を出せなくなる状態。本人の意思とは無関係で、言語が分からないことが原因でもない。1カ月以上続き、学業・仕事や対人関係に支障があれば診断の対象となる。

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