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〈16〉日本初“買える葬儀具展”GRAVETOKYO

2025年5月9日

※文化時報2024年12月3日号の掲載記事です。

 葬儀ブランド「GRAVETOKYO」による「見て、着て、さわって 買える葬儀具展」が10月1~31日、群馬県高崎市のショッピングセンター「高崎オーパ」で行われた。複数の事業者が集まって直接購入できる展示即売会を開催したのは日本初で、葬儀具業者7社が出展。期間中、96人が小物を含む葬儀具104点を購入した。16万5千円(イベント特別価格、税込み)の赤のエンディングドレスが5着も売れ、主催者は驚いている。

(画像1:5着も売れた16万5千円の赤のエンディングドレス)
5着も売れた16万5千円の赤のエンディングドレス

 葬儀具展を主催したのは、デザイナーの布施美佳子さん。玩具メーカーの商品企画開発部時代に骨壺を企画開発したのが、葬儀具を手掛けるようになったきっかけだ。

 友人、先輩、後輩など20人以上の葬儀に立ち会い、「こんな真っ白な骨壺や棺桶に入りたくない。自分が理想とする葬儀を行うには自分で準備するしかない」と思って企画開発したのだという。

 2015(平成27)年に日本初の骨壺ブランドとして「GRAVETOKYO」を立ち上げた。22年6月にメインの商品を骨壺から棺桶に変え、カラフルでオリジナリティーあふれる棺桶をデザイン・製作している。

 「ファッションやインテリアなど、人生においてこだわりを持っている人たちが、理想の葬儀を実現するための葬儀具を提供できる環境をつくりたい」と、布施さんは強調する。

 それを具現化したのが、今回開催した葬儀具展というわけだ。

(画像2:展示会場入り口の葬儀具展ポスター)
展示会場入り口の葬儀具展ポスター

20代女性も多く来場

 開催意図は「葬儀の時に初めて見る人がほとんどなので、まずはこういう葬儀具があると知ってほしい。そのためのタッチポイントを増やすこと」だという。

 「葬儀業界に新しい風を起こしたい」と思っている会社に出展を呼びかけ、布施さんを含め7社が集まった。商品・サービス別では、棺桶などが2社、エンディングドレス2社、ペットのエンゼルケア、オリジナル骨壺、遺影写真の制作が各1社となった。

(画像3:葬儀具展入り口のディスプレイ)
葬儀具展入り口のディスプレイ

 来場者数はカウントできていないが、年代は子どもから高齢者まで幅広く、20代、50代、70代が多かったという。性別は女性7割、男性3割くらいだったそうだ。

 70代は終活世代、50代は親の終活世代だが、20代が多かったのは「人生について悩んでいて、死について考えている年代だから」。会員制交流サイト(SNS)などで開催を知り、遠方からわざわざやって来る人も結構いた。

 来場者の反応は、会場を一回りしただけで「葬儀や死に対する怖いイメージがなくなった」とか、「今までは死について考えたり、話したりすることを避けてきたが、自分事なのだと思った」など、好意的かつポジティブに受け止めた人が多かったという。

 こうした反応は、エンディングドレスにファッショナブルなものが多く、かわいらしい小物などが多く展示されていたことも要因だったようだ。

(画像4アイキャッチ兼用:エンディングドレスコーナー)
エンディングドレスコーナー

最期が素敵に見える

 展示・販売されたのは、入棺体験など有料のワークショップも含め30アイテム以上。購入数ベスト3は、1位が入棺体験(49点)、2位が喪服用手袋(16点)、3位が遺影撮影(10点)だった。金額では16万5千円のエンディングドレスが5着で計82万5千円と断トツだった。

 こうした結果について、布施さんは「アパレル業界でも衝撃的だと思う。生前にも着られることもあるが、自分の最期が素敵に見えるという点がニーズをつかんだ」と話す。

 また、エンディングドレスを試着した人は50人を超え、20代の女性も多かったことから、「ファッショナブルな葬儀具の市場は、これから間違いなく増えていくという手ごたえを感じた」と語った。

塚本の目:個人のニーズが顕在化

 周知の通り、葬儀の小規模化、儀式の簡略化は、コロナ禍以降一段と進んだ。しかし、これは葬儀を家族・親族を単位として行っている表れでもある。

(画像5:販売数では最も多かった入棺体験)
販売数では最も多かった入棺体験

 葬儀に対するニーズを個人で捉え直すと、潜在的にはさまざまあるはずだ。それが、社会や家族・親族などからの制約によって顕在化、具現化しにくいのが現実といえるだろう。

 今回の葬儀具展では、それを顕在化させた。16万5千円もするエンディングドレスが、1カ月間に5着も売れたのは筆者も驚いた。

 葬儀具も作り方や販売方法によってはもうかるのだといいたいわけではない。個人の価値観は、葬儀具に対してもさまざまで、大金に値する価値を感じる人もいるのである。

 お寺に対するお布施も、同じことがいえるのではないだろうか。

(画像6キャプション不要:今回の取材相手は…)

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