検索ページへ 検索ページへ
メニュー
メニュー
TOP > 福祉仏教ピックアップ > 『文化時報』掲載記事 > 「高齢者110番」お寺に 警察OBが登録呼び掛け

つながる

福祉仏教ピックアップ

「高齢者110番」お寺に 警察OBが登録呼び掛け

2025年6月15日

※文化時報2025年2月18日号の掲載記事です。

 警察OB2人が一人暮らしの高齢者を見守ろうと立ち上げた一般社団法人つなぎ(中邨よし子代表理事、京都市左京区)が、困りごとを抱えたときに立ち寄る「高齢者110番の家」にお寺を登録してもらおうと奔走している。「子ども110番の家」の高齢者版をつくろうという試みで、移転や廃業がなく全国各地に立地するお寺に着目したという。(大橋学修)

 「高齢者110番の家」は、子どもが助けを求めて避難できる警察・行政主導の「子ども110番の家」をモデルに、つなぎが独自に提唱。外出中の高齢者が、具合が悪くなったり、帰り道が分からなくなったりしたときに頼れる場所をつくることを目指している。

 警察庁によると、認知症のある人の行方不明者は2023年、過去最多の1万9039人に上った。厚生労働省は徘徊・見守りSOSネットワーク構築事業を通じ、自治体が地元企業などと連携して行方不明の高齢者を捜せる体制を整えている。ただ、休日や業務時間外に機能しない点で即時性に欠けるという。

 「高齢者110番の家」では、高齢者が駆け込むと、防災目的を兼ねた専用アプリ「Metell LIFE(ミテルライフ)」で情報を伝達。必要に応じて、つなぎのスタッフが行方不明情報を把握する警察や行政と連絡調整を行ったり、高齢者を自宅に送り届けたりする。

(画像アイキャッチ兼用:「高齢者110番の家」で用いるアプリについて説明する中邨代表理事)
「高齢者110番の家」で用いるアプリについて説明する中邨代表理事

 アプリを使って24時間体制で見守ることで、認知症の高齢者は外出を制限されないというメリットがある。中邨代表理事は「行方不明を防ぐというベクトルだけではだめ。本人が望む外出を実現し、家族も安心できるようにしたい」と語った。

アプリ導入が課題

 つなぎは、行政にも情報共有の枠組みに参加してもらおうと呼び掛けている。行政は情報漏洩(ろうえい)を防ぐため、公務での情報共有は一般的なソーシャルメディアを用いることが制限されている。そのため、専用アプリの利用が欠かせないという。

 課題は、登録してもらったお寺や事業者が利用料として月額1100円を払わなければならないこと。協力者に費用を負担してもらう状況にあるため、何らかの助成が欠かせない。

 実際に、超宗派でつくる地域の仏教会に「高齢者110番の家」への登録を打診したところ、費用負担が足かせになった。複数の兼務寺院を抱えたり、兼職したりする住職への経済的負担が大きく、行政とも連携できていないため、仏教会が主導することは難しいと判断されたという。

 中邨代表理事と共につなぎを設立した竹内雅人さんは「社会貢献の一環として経費負担を許容してほしい。今後は個別に登録可能なお寺を探していきたい」と話した。

公的サービスは不十分

 警察OBの中邨代表理事と竹内さんは、現役時代に保護した高齢者を迎えにくる家族の負担の大きさを感じていた。定年退職を迎えたのを機に、23年4月につなぎを設立した。

 最初は、保護された高齢者を家族に代わって警察に迎えに行ったり、一人暮らしの高齢者の安否を確認したりする「お迎えサービス」を始めた。さらに地域の人たちが顔の見える関係性をつくり、皆で高齢者を見守る環境ができるように、京都市左京区に交流の場「つなぎカフェ」も開設した。

(画像:地域交流を目的に開く「つなぎカフェ」=京都市左京区)
地域交流を目的に開く「つなぎカフェ」=京都市左京区

 中邨代表理事は、介護保険のサービスに高齢者を迎えにいくことが含まれておらず、警察による送り届けも〝善意〟に基づいていると指摘。「公的なサービスが十分ならば、こんな活動はしていない。誰かがやってくれるなら代わってほしいとも思う」と話した。

おすすめ記事

error: コンテンツは保護されています