2025年7月11日
※文化時報2025年2月4日号の掲載記事です。
NPO法人幸ハウス(東京都千代田区)が制作した「414(よいし)カード」を巡り、カードを使った対話会の参加者にアンケートを行ったところ、「最期まで大切にしたいことに気付くことができた」と回答した人が92.2%と、非常に高くなっていることが分かった。幸ハウスによると、414カードや対話会の特長が影響しているとみられるという。

414カードは、死を見据えて自分が大切にしたいことを考えたり、大切な人と対話したりする「死生観対話カード」。幸ハウスが2021年5月に発売した。
幸ハウスでは、遊び方を伝える場を設けたり、対話会を開催する人たちへの研修会を行ったりすることで、カードの普及拡大に努めている。今回紹介するのは、幸ハウスが学校などから依頼されて実施した「414カード対話会」の参加者へのアンケート結果である。
回答数は244件。年齢は10代49%、20代14%、30代8%、40代9%、50代11%、60代以上9%。参加理由は「学校の授業」が78%と多く、その大半は看護学生だという。
414カード対話会の特長をよく表しているのが、次の二つの質問とそれに対する回答だ。
「対話会に参加して、生や死に対する考え方や捉え方に変化はあったか」との問いには、「はい」67.5%、「どちらともいえない」14.6%、「いいえ」17.9%との回答だった。

これについて、代表理事で緩和ケア医の川村真妃さんは次のように話す。
「回答者には看護学生や介護・医療従事者が少なくなく、死生観について考える機会はある。その割には『変化があった』と答えた人が7割近くに上ったのは、多いと言っていい」
「はい」と回答した人たちの自由記述には「対話会に参加して多くの意見を知ることができた」「カードによって自分の考えが言語化できた」といった声が目立った。自身の死生観がどう変化したかではなく、変化した要因・背景について書いており、こうしたコメントが4割以上に上ったという。
「対話会に参加して、死を見据えて最期まで大切にしたいことに気付くことができたか」との質問に対する回答は、「はい」が92.2%と圧倒的に多かった。
自由記述では、大切にしたいことを具体的に書いていた人が51%いた。また、大切にしたいことに気付いた要因・背景について書いていた人も3割近くに上った。「何が大切かを考えることができた」「カードを見て、自分が大切にしたいことが分かった」などである。

川村さんは「これらを考え合わせると、対話会やカードが大切なことを気付かせるのに大きな役割を果たしている」と分析する。
それにしても、自分が大切にしたいことが、そんなに簡単に見つかるものなのか。筆者の疑問に対し、川村さんは「対話会では、死を見据えて最期まで大切にしたいことをその場で考えてもらい、それぞれ発表して皆で語り合い、最後に語り合ったことの感想を言ってもらっている。自らが大切にしていることと向き合うことに、1時間をかけている」と答えた。
日頃は考えることがないテーマであっても、時間をかけて自分自身や周りの人と丁寧に対話を重ねるからこそ、大切にしたいことに気付くことができるというわけだ。
川村さんは「今後は一般の人たちの調査も行い、さらに414カードの普及拡大に努めていきたい」と語っている。
今回の調査結果で筆者が一番驚いたのは、若い人が自ら望んで参加したのでなく、授業として行われた414カード対話会であっても、日頃あまり考えることのない死生観に関して、大切にしたいことに気付いた人が非常に多かったことだ。
414カード対話会と似たものに、国が推進している人生会議=用語解説=がある。しかし、人生会議が増えているとは聞かない。
この点について、川村さんは「自分の人生で大切にしたいことが分かっていない人が、人生会議でいきなり『あなたはどのような医療やケアを望みますか』と聞かれても、答えられない」と話す。
だからこそ、若いうちから自分の人生で大切にしたいことを考えるようにしていくことが大事であり、そのために小学校高学年から使える414カードを開発したのだという。
人々が死生観を養うことを支える立ち位置にいる宗教者は、414カード対話会を開催してみてはどうだろうか。
【用語解説】人生会議
アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の愛称。主に終末期医療において希望する治療やケアを受けるために、本人と家族、医療従事者らが事前に話し合って方針を共有すること。過度な延命治療を疑問視する声から考案された。
