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〈19〉施設職員が葬儀 特別養護老人ホーム三思園

2025年8月13日 | 2025年8月14日更新

※文化時報2025年3月4日号の掲載記事です。

 特別養護老人ホーム三思園(青森市、定員50人)は「施設葬」と呼ぶ葬儀を2020年8月に開始した。白装束への着替え、納棺、儀式などの全てを職員が行い、費用を15万円以下に抑えるなど、高齢者施設では従来にない葬儀である。実施率は年々増えて6割に達しており、遺族からは「経済的理由で何もできないと思っていたが、心のこもった葬儀でとてもうれしかった」などと喜ばれているという。

 三思園では、看取(みと)り後のケアを「施設葬ケア」と呼んでいる。「エンゼルケア」「納棺(白装束、死化粧(しにけしょう)などを含む)」「火葬までの居室安置」「施設葬またはお別れ会」「出棺」「彼岸合同法要」を、今のところ施設が収益を得ることなく行っている。

 出棺の前には、入居者をはじめ参列者が一人ずつひつぎの中に花を手向けてお別れを告げ、霊柩車を見送る。身寄りのない人には、さらに火葬、埋葬まで立ち会う。

ホーム利用者、職員が参加する施設葬
ホーム利用者、職員が参加する施設葬

 遺族からもらう費用は、白装束、ひつぎ、花代だけ。花代は希望する量によって変わるが、総額15万円以下になっている。

 高齢者施設では、施設主催のお別れ会を実施しているところは多いが、葬儀まで行っているところは限られる。また行っているところでも、場所を提供するだけで、葬儀は遺族が主催し、施行は葬儀社が担っている。その意味で施設葬ケアは、従来にない新しい葬儀形態である。

 

看取った人の6割が選択

 三思園が施設葬ケアを開始した意図・背景について、高橋進一看護師長は次のように話す。

 一つは、看取りケアに注力した結果、実施率が2018年度以降は100%となり、その後のケアの必要性が増してきたこと。もう一つは、身寄りのない一人暮らしの人が増え、経済的理由や宗教離れなどで直葬となるのを見て「第二の家族としてケアしてきた私たちが、葬儀を行わないのは忍びない」と考えたことだ。

 そこで、施設におけるあるべきケアの一環として、看取り後のケアも行うことにしたのだという。

 三思園では、施設葬を行うか、お別れ会だけにするかを利用者に選んでもらっている。年間14~19人を看取るうち、施設葬を行う人は年々増え、最近は6割に達している。

職員の手で白装束を着せる「納棺の儀」
職員の手で白装束を着せる「納棺の儀」

 施設葬を選んだ理由としては、経済的理由のほか「葬儀を行うなら、ケアしてくれたホームの職員や、一緒に過ごした入居者に見送ってほしいという遺族が多い」という。

 施設葬を行った遺族からは、「居室に飾ってある写真がどれも笑顔にあふれていて、『幸せだった』と言っているようだ」などの感想が寄せられており、三思園を選んで良かったという声が多いそうだ。

 

家族の悲嘆軽減にも

 施設葬を行わなかった約4割の利用者は、葬儀をどうしたのかという実態は把握できていないが、施設葬を選ばなかったのは、親戚や近所などとの付き合いがある、互助会で葬儀費用を積み立てている、葬儀専門会社に葬儀を事前予約していた―などとの理由だという。施設外で通常の葬儀を行っている人が多いとみられる。

 施設葬ケアを開始してから約4年半の効果・成果について、高橋看護師長は「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)=用語解説=と看取りケアに施設葬ケアを加えたことにより、施設とご家族とのつながりがさらに深くなった。これら一連のケアが、ご本人のナラティブ(人生の物語)を紡ぎ、最期の人生を輝かせることによって、家族の悲嘆軽減にもなっている」と語る。

 また、「職員は、ご本人の最期の時に、第二の家族のように関わることで、充実感を得る効果がみられる」のだそうだ。

車が見えなくなるまでお見送りする職員ら
車が見えなくなるまでお見送りする職員ら

 

 

塚本の目:僧侶が来ないのはおかしい

 施設葬では、遺族の希望により僧侶に来てもらい、戒名・法名をつけ、読経してもらうようにしている。

 しかし、実際に僧侶に来てもらう遺族はあまりいない。その主な理由を、高橋看護師長は二つ挙げる。

「最後の別れの儀」で花入れを行う利用者
車が見えなくなるまでお見送りする職員ら

 一つは、「この地域のお布施の相場は50万円で、それだけの大金を払えないという人が多い」こと。もう一つが、「僧侶にお願いしても『施設ではやらない。お寺でやってくれ』と言われる」ことだという。

 後者の理由について、高橋看護師長は「施設に来てもらうときには、お布施はできるだけ安くしてくれるようお願いしている。お布施が少なくなる上に、会場使用料も取れないからではないか」と推測している。

 これを聞いて、筆者は次のように思った。

 仮にこうした推測が事実ではなかったとしても、理由のいかんを問わず、葬儀を「施設ではやらない」と言うこと自体がおかしいのではないか。ましてや、施設葬は直葬で済ますことが忍びなくて行っているのだから、僧侶はむしろ積極的に協力すべきではないだろうか。

 

 

【用語解説】アドバンス・ケア・プランニング(ACP)

 主に終末期医療において希望する治療やケアを受けるために、本人と家族、医療従事者らが事前に話し合って方針を共有すること。過度な延命治療を疑問視する声から考案された。「人生会議」の愛称で知られる。

 

 

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