2025年9月10日
※文化時報2025年4月8日号の掲載記事です。
専門葬儀社の株式会社ファイン(大分市)は、生活保護受給者や身寄りのない人など「エンディング困難者」と同社が呼ぶ人たちの支援に注力している。その結果、年間施行1267件(2024年9月決算)のうち、家族以外からの依頼は270件で、総件数に占める割合は21%と全国の葬儀社の中でもトップクラスになっている。
仕出し料理業から2010年に葬儀業に参入したファインは、当初から生活保護受給者の葬儀受注に取り組んできた。その後、認知症高齢者や成年後見制度=用語解説=の利用者、単身高齢世帯の葬儀受注にも積極的に取り組み、20年6月には事業コンセプトを「誰もが、誰かに見送られる安心を」に変更。エンディング困難者の支援と葬儀受注に注力してきた。
エンディング困難者の葬儀受注は利益がさほど大きくはないが、注力する意図について茶屋元崇行統括本部長は次のように話す。

「時代背景としては、エンディング困難者は今後ますます増えてくる。だが当社の思いとしては、ビジネスとして葬儀で売り上げを追うよりも、社会的な意義ややりがいのある葬儀を行いたいということが先にある」
エンディング困難者が亡くなったときに葬儀を依頼してくるのは、困難者を支援し、喪主的な役割を担う家族以外の行政や専門機関・専門家などである。そのため、受注するための取り組みとしては、そうした支援者との連携を重視する。
テーマ別にさまざまな活動を行っているのも特長だ。一つ目は、成年後見制度。専門職が知見を得るための勉強会やセミナーを行う「みんなの後見センター」を開設するとともに、元気なうちに信頼できる人に後見を頼むことを推進する「魅力ある自分らしい任意後見教室」を開催している。

二つ目は、身寄りの有無にかかわらず、家族の支援を得られない人への支援。専門家が集まって現状・課題を共有し、対応策を検討する「身寄りなし問題検討会」の開催や、ファインの従業員で社会福祉士と看護師の資格を持つ2人が、電話で問い合わせがあった段階から無料で相談対応する「おひとりさま相談室」を設けるなどしている。おひとりさま相談室は、ケアマネジャーなどの支援者からの相談が4割を占めているという。

このほか、多職種連携と情報発信を目的にした「社会課題を構造的に分析し、理解する」取り組みも行っている。
例えば、大分市と大分県別府市の医療機関・福祉施設を対象に「身元保証」に関するアンケート調査を行ったり、高齢者の生活問題に関する「因果ループ図」を作成したりして、支援者に提供している。
茶屋元氏は、それぞれの専門家は自分の領域の制度やサービス、課題については把握しているが、社会課題をトータルで構造的に捉えていないという。そうした面での情報や知見があると、行政や専門家のセミナー・勉強会に講師として呼ばれたとき、価値を感じてもらえるのだという。

なぜ茶屋元氏には社会課題の構造的な分析・理解ができるのか。
「ファインに入社する前は、地方紙の新聞記者として7年間勤務していた。入社してからも、エンディング困難者を支援するために、社会福祉士、宅地建物取引士、浄土真宗本願寺派教師、社会福祉ファンドレイザーなどの資格を取得し、その後も勉強を続けてきた」と、茶屋元氏は語る。

エンディングを支援する各分野の強み、弱みを理解できているからこそ、多様な専門機関・専門家と連携でき、信頼関係を築くことができるのだろう。
【用語解説】成年後見制度(せいねんこうけんせいど)
認知症や障害などで判断能力が不十分な人に代わって、財産の管理や契約事を行う人(後見人)を選ぶ制度。家庭裁判所が選ぶ法定後見と、判断能力のあるうちに本人があらかじめ選んでおく任意後見がある。

家族以外からの施行依頼270件の依頼元は、行政(生活保護担当者、地域包括支援センター職員)、保健所、社会福祉協議会、後見人、病院、介護・高齢者施設である。特に注目すべきなのは、行政や公共機関からの依頼が半分以上を占めていることだ。
その要因は、先述した取り組みによって信頼関係を築いてきたことに加え、依頼元に合わせた対応を心がけてきたことにもある。
しかし、行政や公共機関はビジネスとして利益を得るためにアプローチしてきた法人には、門戸を閉ざす。その点、茶屋元氏は「売り上げを追うより、社会的な意義ややりがいのある葬儀を行いたい」と語っている。
筆者は、依頼件数が増えてきた最大の要因は、ここにあると思った。