検索ページへ 検索ページへ
メニュー
メニュー
TOP > 福祉仏教ピックアップ > 供養最前線 > 〈22〉最期支える「第4の縁」 労働者協同組合「結の会」

つながる

福祉仏教ピックアップ

〈22〉最期支える「第4の縁」 労働者協同組合「結の会」

2025年11月10日

※文化時報2025年6月3日号の掲載記事です。

 労働者協同組合ワーカーズ葬祭&後見サポートセンター「結(ゆい)の会」(東京都新宿区)は、家族・地域・会社に代わる「第4の縁」になることを目指し、生前から死後までを包括的にサポートしている。真宗大谷派僧侶で、社会福祉士でもある中下大樹代表理事は「家族や地域との縁がなく困っている人や、行政の支援から漏れてしまう人、大手業者が引き受けないような人から依頼を受けることが多い」と話す。

 労働者協同組合とは、2022年10月に施行された労働者協同組合法に基づく法人。組合員が出資すること、事業に組合員の意見を適切に反映させること、組合員自ら事業に従事すること―を基本原理とする組織である。

 中下代表理事は、労働者協同組合から受託して児童虐待対応の業務に携わったことをきっかけに、組合との関係を築いた。労働者協同組合は、人材派遣以外なら広く事業が認められており、僧侶としても活動しやすいことから、活用して「第4の縁」づくりに取り組むことにした。

(画像1:講演会で講師を務める中下代表理事)
講演会で講師を務める中下代表理事

 そして、これまでの仕事や社会活動を通じて知り合った看護師や供養関係の専門職、ファイナンシャルプランナーなど専門資格を持つ人々に声をかけ、組合員として参加してもらい、「看取(みと)り」「葬儀」「お墓」「後見」「遺言」「相続対策」「死後事務委任」など、人生の最終段階をワンストップで包括的に支援する「結の会」を設立した。

 組合員は現在10人。各自が本業を持ちながら、必要に応じて活動を行っている。

 支援対象は「身寄りのない人」「頼れる人がいない人」「経済的な問題を抱えている人」などで、行政の支援が届かず、大手業者も引き受けないケースが増えている。「生活保護を利用できる人のうち、実際に利用している人は3割程度といわれている。大手にとって利益の少ない葬儀は、結の会に依頼が来る」と、中下代表理事は話す。

(画像2アイキャッチ兼用:中央のひつぎに故人が納められた「結の会」が施行した葬儀)
中央のひつぎに故人が納められた「結の会」が施行した葬儀

 最近特に多いのが、高齢者の刑務所出所者で、かつ行き場のない人。住居や仕事の確保、身元保証から看取り、お墓の手配まで、多岐にわたる支援を行っている。

 出所者の中には殺人や性犯罪、薬物関連の罪を犯した人もいるほか、再犯のリスクがあるため、支援には相応の覚悟が必要だ。それでも取り組む理由について、中下代表理事は次のように語る。

 「こうした人々は家族や社会と断絶し、行政や福祉関係者からも敬遠されている。私のところに相談が来て、もし私まで断れば、頼れる人が誰もいなくなり、また再犯につながってしまう。それは避けたい」

 22年10月の設立からわずか2年半で、葬儀・法要・納骨の支援実績は100人を超えた。任意後見契約や死後事務委任契約を公正証書にするなど、包括的な支援を行ったケースも数十件に上る。

(画像4:身寄りのない人の遺骨を引き取っている)
身寄りのない人の遺骨を引き取っている

 とはいえ、財政面は楽ではない。「支払い能力のある人は少ない。全くお金がない人もおり、利益を目的とした組合でもないため、私個人が持ち出している部分も多い」と中下代表理事は明かす。今後の方針を尋ねると、「競争の激しい葬儀・供養業界とは距離を保ち、採算度外視で静かに活動を続けていきたい」と語った。

塚本の目:〝聖〟を追求 問われる信仰

 中下代表理事は、自傷他害行為を伴う重度の知的障害者の居住支援にも取り組んでいる。利用者からは殴られたり、眼鏡やパソコンを壊されたりすることもあるという。

 そうした際の心情について、中下代表理事はこう語る。

 「私も人間なので、殴られれば『ふざけるな、この野郎』と思うし、殴り返したくもなる。よく『人権が大切』と世間ではいわれるが、現場を知らない人が語るきれい事に感じることもある。現場で働く側の人権はないに等しい」

(画像3:中下代表理事の著書『悲しむ力 2000人の死を見た僧侶が伝える30の言葉』)
中下代表理事の著書『悲しむ力 2000人の死を見た僧侶が伝える30の言葉』

 では、実際に殴られたときはどうするのか。「これは私自身の信仰が問われているのだと考えると、暴力を振るう方も自分なりに必死で生きているのだと感じられるようになる。そして、自分自身の中にある加害性も見えてくる中で、共に生きていこうという気持ちになる」

 「共に生きる」とはどういうことか─。その質問に中下代表理事は「私はなぜ僧侶になったのか、私の信仰とは何かと考え、経典を読み返す。つまり、相手を通して自分自身を見つめ、学ばせてもらっている」と述べた。

 筆者はこれらの話を聞いて、中下氏は〝聖〟であることを追求しており、だからこそ、他の人が敬遠する支援にも進んで取り組んでいるのだろうと思った。

(画像5 今回の取材相手は…)
今回の取材相手は…

おすすめ記事

error: コンテンツは保護されています