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死因究明で遺族ケア 医療と宗教、解剖巡り連携

2025年12月23日

※文化時報2025年10月31日号の掲載記事です。

 京都府立医科大学法医学教室は21日、府民公開講座「いざというときのために知っておきたい死因究明制度」を開き、厚生労働省モデル事業の導入で、医療関係者と宗教者がつくるチームが解剖を承諾した遺族をケアした成果を公表した。厚労省医政局医事課死因究明等企画調査室の井出規文氏、京都府警察医の青木繁明氏、臨床宗教師=用語解説=で龍谷大学文学部の鍋島直樹教授、京都府立医科大学法医学教室の池谷博教授ら4人が登壇し、死因究明の意義とそれに伴う遺族のケアについて論じた。(大橋学修)

「福祉的な医療」と評価

 死因究明制度は、突然死や孤独死などで亡くなった人の死因を調べる制度で、司法解剖とは異なり、遺族の承諾を得て行われる。2019年6月に成立した死因究明等推進基本法で制度化された。

 厚労省は22年度、制度の浸透のため、死因究明拠点整備モデル事業を創設し、これまでに8拠点で事業を実施している。

 このうち京都府立医科大学は他の7拠点と異なり、医療関係者と宗教者がチームを組んで事業に取り組んでいる。池谷教授が、鍋島教授に加わるよう要請したという。鍋島教授は「死因が分かれば遺族が区切りをつけることができる」と説明。厚生労働省からは「福祉的な医療」と評価されたことも伝えた。

(画像1:京都府立医科大学のチームが作成した死因究明を巡る相関図)
京都府立医科大学のチームが作成した死因究明を巡る相関図

わだかまりを解消

 今回の公開講座で厚労省の井出氏は、解剖によって得られた知見で再発を防止できることを示し、「未来の命を救う制度。ご遺族の理解が不可欠であり、説明と結果の開示、心のケアなどの寄り添いが重要だ」と呼びかけた。

 警察医の青木氏は、遺族に解剖の承諾を得る前に、亡くなった人の生き方や思い出に耳を傾け、気持ちを落ち着かせるようにしていると報告。「ご家族の依頼・承諾が根本であり、『警察に言われたから従った』という後悔がないよう納得の上で決断してもらうことを重視している」と解説した。

 鍋島教授は、死を超えて亡くなった人の生きた意味を受け取らせるのが宗教であることや、臨床宗教師が傾聴活動を通じて、苦悩を抱える人に生きる力を届けていることを紹介。「遺族が吐き出した気持ちの中の愛情を大切にすることで、亡くなった方の死を意味あるものにできる」と強調した。

(画像2:臨床宗教師で龍谷大学文学部の鍋島教授)
臨床宗教師で龍谷大学文学部の鍋島教授

 池谷教授は、死因究明制度による解剖は遺族が直接、医師から死因の説明を受けることができ、遺族の「なぜ」という思いに応えることができると語った。

 その上で「死因究明は意外と身近な問題。不幸があった際に『このままでいいのか』と考え、死因究明という選択肢を思い起こすことで、亡くなった方の死を無駄にせず、ご遺族の心のわだかまりを解決する」と力を込めた。

臨床宗教師の役割

 池谷教授は、かつて自身が在籍していた米軍の海軍病院でチャプレン=用語解説=が活動していることに感銘を受けたという。

 京都府立医科大学のチームは、遺族のケアを念頭に置くため、医師や臨床宗教師と遺族を仲介する看護師にも遺族の心に寄り添うことを求めている。ただ、通常業務に加えて新たな心理的負担をかけることになる。

 チームの要となった看護師で、京都府立医科大学研究員(看護学博士)でもある清水知子さんは「亡くなった人のことを知らないだけに、最初はどのように接すればいいのか迷った」と振り返る。

(画像3アイキャッチ兼用:公開講座で登壇した池谷教授)
公開講座で登壇した池谷教授

 池谷教授は「看護師の代わりに臨床宗教師が仲介役になってもいいが、そのためには臨床宗教師が病院に常駐する必要がある。そこが難しい」と漏らした。臨床宗教師を雇用しても診療報酬の医療点数が加算されるわけではなく、病院の人件費負担が増加して経営を圧迫してしまうという。

 厚労省の井出氏は、臨床宗教師が診療報酬に位置付けられていない要因に、宗教に対する忌避感や臨床宗教師の認知度の低さを挙げ、「死因究明制度も議員立法で成立した。臨床宗教師の常駐を求めている人たちが、国会議員に働きかけるしかない」と話した。

【用語解説】臨床宗教師(りんしょうしゅうきょうし=宗教全般)

 被災者やがん患者らの悲嘆を和らげる宗教者の専門職。布教や勧誘を行わず傾聴を通じて相手の気持ちに寄り添う。2012年に東北大学大学院で養成が始まり、18年に一般社団法人日本臨床宗教師会の認定資格になった。認定者数は25年3月現在で211人。

【用語解説】チャプレン(宗教全般)

 主にキリスト教で、教会以外の施設・団体で心のケアに当たる聖職者。仏教僧侶などほかの宗教者もいる。日本では主に病院で活動しており、海外には学校や軍隊などで働く聖職者もいる。

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