2025年12月28日
※文化時報2025年11月4日号の掲載記事です。
障害のある子を持つ母親らが設立し「誰にとってもやさしい医療」の実現を目指すNPO法人FMCA(中井美恵代表理事)は10月24日、大阪市内で設立記念セミナー「みんなで話そう大切な【性】のこと」を開いた。京都教育大学総合教育臨床センター講師の門下祐子氏が登壇。性について「生きていく上での基本となるもの」と位置付けた上で、人権感覚を持って自分事として学ぶよう呼びかけた。(主筆 小野木康雄)
門下氏は特別支援教育が専門で、知的障害のある人の「性の権利」を尊重した教育・支援を研究している。京都教育大学では、学生約200人が履修する「性倫理と性教育」の授業を担当。一橋大学でも非常勤講師として「人間にとって性とは何か」を問う科目「ヒューマンセクソロジー」を教えている。

セミナーで門下氏は「性暴力や虐待、体罰、ハラスメントの根底の一つには、人権感覚のなさがある」と問題提起。人権感覚が身に付いていれば、障害のある人や子どもたちのことを権利主体として捉えられると強調した。
その上で、性は生きていく上での基本となるものであり、トラブルの文脈だけでなく、豊かで心地いい関係を築くものとしても語られるべきではないかと提言した。
障害のある人や子どもたちへの性教育の事例も紹介。公的な場所と私的な場所を明確に区別し、一人の時間と場所なら自分の性器を触っても構わないと、本人が分かるように伝えることが大切だと述べた。半面、障害のある人は見守られる分、ずっと誰かの視線にさらされがちで一人になれないとも指摘した。
また、体に触れることの同意を取ることや断ることの練習が大切だと語り、「何か起きた時への対処指導ではなく、日頃から少人数で学び合うことも重要」と伝えた。
この後、FMCA理事で公認心理師の佐々木康栄氏との対談も行われた。佐々木氏は「保護者や支援者は、権力を持っていることを自覚して本人の声を聞こうとしなければならない」と語り、門下氏は「私たち大人も、性教育を受けていないという問題がある」と応じた。
会場では29人が参加し、オンラインでも68人が視聴を申し込んだ。

中井代表理事は開会のあいさつで「性は私たち一人一人の生き方と尊厳に深く関わっており、やさしい医療の土台になると感じている」と述べた。
FMCAは「誰にとってもやさしい医療」の英語(Friendly Medical Care for All)の頭文字で、前身は任意団体「スペシャルニーズのある人のやさしい医療をめざす会」。昨年4月に発足し、今年8月にNPO法人となった。
障害のある人や医療的ケアが必要な人、高齢者や子ども、妊婦、外国人といった特別な配慮のいる「スペシャルニーズのある人」が安心して医療・保健・福祉サービスを受けられるよう、制度や仕組みの改善を目指している。

これまでに、障害のある人の18歳以降の医療と暮らしや、クリニックに行く前にできることをテーマにした講演会を開催。イベントや学会への出展も積極的に行ってきた。
田中美紀理事は「法人化がゴールではない。当事者や保護者、医療従事者、支援者への聞き取りを続け、活動を社会に根付かせたい」と話している。