2026年2月7日
※文化時報2025年12月9日号の掲載記事です。
龍谷大学世界仏教文化研究センターは、大宮学舎(京都市下京区)で国際ワークショップ「オランダにおける『仏教スピリチュアルケア(BSC)』プログラムの展開」を行った。大学、刑務所、軍で活動する3人の仏教チャプレン=用語解説=が、同国でのスピリチュアルケア=用語解説=の現状を報告した。
アムステルダム自由大学のモニーク・ライトフェルト氏は、オランダ政府の法務・安全保障省でスピリチュアルケア・サービス部門「仏教宗派」の主任を務めている。
同氏は仏教が第2次大戦後、移民らによって本格的に流入し、心理学と哲学を備えた一種のライフスタイルになったと説明。マインドフルネスによるストレス軽減法や認知療法が保険適用されるなど、世俗化・大衆化され、存在感を示していると語った。また、「信教の自由」は患者や軍関係者など、寺院を訪れることができない国民に対し、仏教へのアクセスを保障していると解説した。
オランダ刑務所のチャプレンでオランダ仏教セミナリー講師のヤッコ・ファンデフェルデン氏は、アムステルダム自由大学仏教学部での指導内容を説明。仏教チャプレンの候補者は、定められた大学院課程を修了する必要があること、国家専門職登録簿への登録を義務付けられていることを伝えた。
仏教チャプレンとして軍に所属するアリー・ローゼンダール氏は、各宗教のチャプレンが非戦闘員の軍人として部隊に配属されており、演習や任務に同行して黙想会や合宿、勉強会、遺族向けの追悼法要を軍内で行っていると語った。
龍谷大学の森田敬史教授は、日本の仏教が「葬式仏教」という言葉などで否定的に受け止められることがあると指摘。仏教チャプレンとして長岡西病院(新潟県長岡市)ビハーラ病棟で勤務していた経験に基づき、公共施設内における宗教の在り方について意見を求めた。
ライトフェルト氏は「宗教性を出すことに対して引け目を感じることはない」と答え、同大講師のネイサン・ミション氏は「米国の刑務所で、ある仏教チャプレンが瞑想(めいそう)グループを作ったところ、非常に人気が出て、非仏教徒の受刑者にも広まった」との事例を紹介した。

同大の打本弘祐准教授は、中世日本で兵士に同行し戦場で弔いなどを担った「陣僧」について説明。一方で第2次大戦中の軍隊チャプレンが、仏教の教義を曲げて必要以上に戦争に協力した実態と、戦後の厳しい政教分離で日本の自衛隊にはチャプレンが存在していないことなどを示した。
その上でローゼンダール氏に対し「戦場で軍人としての義務に忠実であろうとすることは、間接的に軍に加担することになる。心理的葛藤とどう向き合っているのか」と質問した。
ローゼンダール氏は「刑務所でも働いていたが、囚人のケアをしていたからといって犯罪には加担していない」と強調。「軍隊で働いているからといって良い兵士を育成しているわけではなく、苦しみを緩和し、どんな状況下でも平和な状態でいられるための手伝いをしている。軍人を助けることは、民間人を助けることになる」と答えた。
今回の国際ワークショップは仏教チャプレンの養成と実践の国際比較研究をテーマに、11月14日に開催された。
【用語解説】チャプレン
主にキリスト教で、教会以外の施設・団体で心のケアに当たる聖職者。仏教僧侶などほかの宗教者もいる。日本では主に病院で活動しており、海外には学校や軍隊などで働く聖職者もいる。
【用語解説】スピリチュアルケア
人生の不条理や死への恐怖など、命にまつわる根源的な苦痛(スピリチュアルペイン)を和らげるケア。傾聴を基本に行う。緩和ケアなどで重視されている。