2026年2月24日
※文化時報2026年1月20日号の掲載記事です。
宗教や年齢、性別に関係なく、見知らぬ人と死についてカジュアルに語り合う「デスカフェ」をテーマにした日本初の専門書『デスカフェ 死のものがたりを共有する場』(晃洋書房)を、志學館大学の吉川直人講師(44)=社会福祉学=が昨年出版した。足かけ8年にわたって国内の活動を入念に取材した集大成。中国で電子版配信の話が進むなど、海外からも注目が集まっている。(松村一雄)

デスカフェはスイスの社会学者が妻の死をきっかけに、死について気軽に話し合うカフェを始めたのが起源とされ、2011年にイギリスから広まったといわれる。
吉川講師は、多死社会の進展やつながりの希薄化に漠然とした問題意識を抱いていたところ、デスカフェと出合い、18(平成30)年から調査研究を始めた。
当初は死について対話することにネガティブな空気感が根強かったが、調査を積み重ねる中で開催者同士の横のつながりが生まれ、若者に終活が広がるなど、少しずつ変化が生まれ始めたという。「死に対してポジティブに対話ができるという土壌を耕すことの一翼は担えたのかなと思う」と吉川講師。足かけ8年の調査研究は「あっという間だった」と振り返る。
「死に対する捉え方、考え方、向き合い方、準備の仕方など、もやもやした気持ちを抱えている人に、選択肢を増やす取り組みとして問いかけたかった」と話す。
お寺がデスカフェの場を提供したり、主催したりすることもあるが、吉川講師はこう考えている。「お寺には、看取(みと)りも含めた地域の再構築が必要とされる中で、より求められる機能や役割がある。地域ケアの中心になり得る」
そのためには単独ではなく、医療職、福祉職、葬祭業者など「死のフィールドに携わる他の人たちとの協力や連携」が大切という。そのコラボレーションによって、お寺の可能性や地域の中での機能が増えていくとみている。

地域コミュニティーが廃れればその地域で成り立っているお寺も廃れ、機能も衰えていく。そうした負の連鎖に対し、何ができるのかを考えることが重要だ。
吉川講師は「地域に場を提供し続けることで、お寺に人が集まり、地域も活性化してくる。お寺にはそこはかとない信頼感があり、その場に集うという抵抗感も少ない」と話す。
デスカフェの自由度は意外に高い。死についての対話という大前提さえ守れば、ボランティア人材の育成や、日常的に死に接する医療者などの専門職のバーンアウト(燃え尽き症候群)を防ぐ場づくりもできる。
将来性について、吉川講師は「看取りを含め、地域の潜在力を引き出すことも可能だ」と考えている。
著書の中では、デスカフェの開催者や参加者からの話を元に、多様な取り組みについて取り上げた。それだけでなく、日本社会における死の位置づけの変遷や、メディアによる多死社会の取り上げ方なども紹介。死生観に関する調査結果も明らかにしている。
デスカフェでは、老若男女が世代を超えて死について語り合うことで、死と向き合えるようになり、自分の死生観を浮き彫りにできる。吉川講師は「こういった場が存在し続けることで、死生観全体がよりカジュアルになり、今を生きることを大切にすることにつながっていくはず」と話す。
『デスカフェ 死のものがたりを共有する場』は定価3190円(税込み)。問い合わせは晃洋書房(075―312―0788)。