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「愚者の自覚」で傾聴 浄土宗寺庭婦人会が研修

2024年10月24日

※文化時報2024年7月2日号の掲載記事です。

 浄土宗寺庭婦人会(郁芳阿佐会長)は6月18日、京都宗務庁で心のケア支援プロジェクト研修会を開き、チャプレン=用語解説=で願生寺(大阪市住吉区)住職の大河内大博氏が「檀信徒に寄り添う基本姿勢」と題して講演した。オンラインを含む参加者80人に対し、傾聴者の在り方を説いた上で、浄土宗総合研究所による研究成果がまとまった「法然仏教カウンセリング」について解説した。

 大河内住職は、終末期医療の患者は孤独を感じていても、直接的な表現では伝えないと指摘。込められたメッセージを受け止めようとする姿勢が重要だとし、「行間を読み、表情や空気感を漏らさず聞くことが傾聴。伝わってくるものを拾う感性を研ぎ澄まさなければならない」と説明した。

(画像①アイキャッチ兼用:心のケア支援プロジェクト研修会に参加した寺庭婦人ら)
心のケア支援プロジェクト研修会に参加した寺庭婦人ら

 さらに「解決策を持たず、救うこともできない自分と向き合うことが大切。何もできないからこそ、場と時間を共にして聴き続ける関係性が、寄り添いの出発点になる」と明言した。

 また、至らぬ自分を自認する浄土宗信仰の基本姿勢「愚者の自覚」と、傾聴者として解決策を見いだせない自身を受け止める姿勢には親和性があるとも述べた。

ケアは教化と異なる

 「法然仏教カウンセリング」は、臨床現場でカウンセリングを行っていた故<strong>中原実道=用語解説=</strong>師の実践方法を参照した手法。阿弥陀仏の慈悲によって誰もが救われ、共に救済される立場として人と人とが存在するという法然上人の救済観と人間観を生かしている。

 浄土宗総合研究所研究員の曽根宣雄氏によると、中原師は机をたたき泣き叫ぶ態度を示されても、諭すことなく〝精いっぱいの姿〟とそのまま受け止めたという。そして「相手と自分の同一性を求めるのではなく、呼応する関係であるよう心掛けた。人の話を聞けない自分自身を、信仰の中で許していた」と表現する。

 大河内氏は「目の前の人と呼応する関係にあることは、念仏の声に乗せて阿弥陀仏に悩みを聞いてもらう、私と仏の関係と同じだ」と話した。

(画像②:講演する大河内住職)
講演する大河内住職

 また、大切な人を亡くした人のグリーフ(悲嘆)ケアが、中陰法要や年忌法要で行われると指摘。「忘れずに語ることは、故人に命を吹き込むこと。それができるのはお寺しかない」と強調した。

 その上で、成長や自己実現を手助けするケアと、教え諭して信仰の道に進ませる教化は異なると説明。「故人と新しい関係性を紡ごうとする人に、仏の話は通じない。自分自身の至らなさを自覚していないと、教化に傾いてしまう」と語った。

【用語解説】チャプレン(宗教全般)

 主にキリスト教で、教会以外の施設・団体で心のケアに当たる聖職者。仏教僧侶などほかの宗教者もいる。日本では主に病院で活動しており、海外には学校や軍隊などで働く聖職者もいる。

【用語解説】中原実道(なかはら・じつどう、1929~2014)

 浄土宗岡山教区清雲寺前住職。広島大学卒業後、特別支援学級の指導などに携わり、1974(昭和49)年に福山市立女子短大教授に就任。浄土宗教義と非指示的カウンセリングを融合させた先駆者として知られる。

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