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福祉仏教ピックアップ

仏教・医療・福祉を横断 淑徳大学がフォーラム

2026年4月1日

※文化時報2026年2月13日号の掲載記事です。

 淑徳大学アジア国際社会福祉研究所(戸塚法子所長)は1月31日、東京キャンパス(東京都板橋区)で第10回国際学術フォーラム「世界に拓(ひら)かれる仏教ソーシャルワークの可能性―理論と実践をつなぐスピリチュアリティの視点」を開催した。仏教の社会活動やスピリチュアルケア=用語解説=をテーマに、日本、米国、ネパールの識者が講演や報告、パネルディスカッションを行った。地域のつながりが希薄化する中、仏教、医療、福祉を横断的に捉え、生と命の意味を考える新たなケアの可能性を探った。(山根陽一)

(画像アイキャッチ兼用:仏教の社会活動やスピリチュアルケアをテーマに行われた第10回国際学術フォーラム=東京都板橋区の淑徳大学東京キャンパス)
仏教の社会活動やスピリチュアルケアをテーマに行われた第10回国際学術フォーラム=東京都板橋区の淑徳大学東京キャンパス

仏教の包摂性に期待
エドワード・R・カンダ氏
(米カンザス大学名誉教授)

 「スピリチュアル・ダイバーシティ」(霊性の多様性)の研究者。世界各地の文化と宗教を結び付け、心身の健康や障害に関する教育に従事してきた。両親はカトリックだが、自身は仏教と儒教の哲学を研究・実践し、禅にも精通している。

(画像:カンダ氏)
カンダ氏

 講演では、仏教の包摂性、精神性を活用した社会活動の意義や瞑想(めいそう)の有効性を理論的に示した。

 どんな人にとっても異文化を受容するのは簡単ではないとした上で「マインドフルネスやヨガは自身を高め、医療的ケア活動にも応用できる」と主張。ソーシャルワーカーの教育で重要なのは「宗教的な拘束から離れ、自己を超越した究極の現実を理解すること」だと指摘した。スピリチュアルの真の意義を広めるには、身近な話題に置き換えて話すことも大切だと強調した。

草の根から活動始まる
島薗進氏
(東京大学名誉教授)

 近現代の宗教史、宗教社会学、死生学を研究する日本宗教学界の第一人者。明治維新から現代に至る日本仏教界の社会活動史を解説した。その端緒は19世紀後半、福島県で貧困者を廃寺に住まわせるなどして生活支援を行った瓜生岩子にあると解説した。この施設は曹洞宗円通寺(福島市)の児童養護施設の前身に当たる。

(画像:島薗氏)
島薗氏

 「日本仏教の社会活動は、学術や教育の仕組みに頼らず草の根的な色合いが強い。今も仏教者個人や個別寺院の取り組みが多い」と述べた。チャプレン=用語解説=については、教誨(きょうかい)師は明治前期から存在したが、医療や福祉との連携は少なかったという。

 現在では子ども食堂、自死自殺問題に取り組む僧侶、臨床宗教師=用語解説=など、時代に合致した「多様な活動が見られるようになってきた」と語った。

地震頻発、支援に全力
カルマ・サングボ氏
(ネパール・ヒマラヤの子どもたちの学校校長)

 ネパールの高僧で、利他共生の取り組みを実践する。同国政府の担当者として釈尊の生誕地であるルンビニの発展にも貢献している。

(画像:サングボ氏)
サングボ氏

 講演では、ネパールの仏教ソーシャルワークの先駆者で2023年に死去したタング・リンポチェ氏の理論や活動を紹介した。

 チベット仏教の高僧だったリンポチェ氏は、大乗仏教の理論を礎に智慧(ちえ)と慈悲の両輪を重視し、全ての存在は相互に依存し合うと説いた。設立した僧院では仏教哲学と近代教育を統合し、社会奉仕の基盤として活用。尼僧の教育も推進した。

 難民や貧困地域への食料、住居、医療支援を行い、たびたび発生する大地震の際にも全力で支援した。ヒマラヤの少数民族の子どもたちにも仏教教育を行い、「ネパール社会全体の模範的な存在だった」という。

宗教が人生の真ん中に
今井洋介氏
(長岡西病院ビハーラ病棟長)

 新潟県長岡市の長岡西病院ビハーラ病棟で勤務し、日本仏教看護・ビハーラ学会長を務める。ビハーラ=用語解説=の起源や自身の出会い、現状を語った。

(画像:今井氏)
今井氏

 看取(みと)りは2千年以上に及ぶ仏教の歴史と共に存在し、日本では僧侶が貴族らの病や死に立ち会い、死生観を探求していたと説明。その後、1980年代に日本的なターミナルケアの在り方として、仏教を背景にした現在のビハーラの形が定着したと述べた。

 「仏教のある生活では、生老病死は当たり前の営みで、宗教が人生の真ん中にある社会に本当の幸せがあると思った」という。現在は僧侶と協働で認知症のある人や終末期の患者に呼吸のリズムの大切さを説き、四季折々の仏教行事を楽しみながら、医療とは異なる観点で傾聴を行っている。

対話あるケアタウンを
今村達弥氏
(ささえ愛よろずクリニック院長)

 精神科医。新潟市秋葉区のクリニックで院長を務めながら、地域住民の人生を支える「医療福祉総合ケアタウン」の構築を目指している。

(画像:今村氏)
今村氏

 アルコールやギャンブル依存症の回復に重要なのは、人間は無力だと自覚することだという。

 自分を超えた大きな力を信じ、祈りと黙想を通じて、その大きな力と触れ合うことが重要だと指摘。対話では、言いっぱなし、聞きっぱなしを続けることにより、「無力な当事者同士が親和性を持つようになり、大きな力が宿り、回復への共同体が起動する」と語った。

 今後は精神障害にも対応した地域包括ケアシステム=用語解説=が必要だと強調。長期間ひきこもる人への積極的な訪問で情報を届け、支援につなげることが求められると述べた。

【用語解説】スピリチュアルケア

 人生の不条理や死への恐怖など、命にまつわる根源的な苦痛(スピリチュアルペイン)を和らげるケア。傾聴を基本に行う。緩和ケアなどで重視されている。

【用語解説】チャプレン(宗教全般)

 主にキリスト教で、教会以外の施設・団体で心のケアに当たる聖職者。仏教僧侶などほかの宗教者もいる。日本では主に病院で活動しており、海外には学校や軍隊などで働く聖職者もいる。

【用語解説】臨床宗教師(りんしょうしゅうきょうし=宗教全般)

 被災者やがん患者らの悲嘆を和らげる宗教者の専門職。布教や勧誘を行わず傾聴を通じて相手の気持ちに寄り添う。2012(平成24)年に東北大学大学院で養成が始まり、18年に一般社団法人日本臨床宗教師会の認定資格になった。認定者数は25年3月現在で211人。

【用語解説】ビハーラ(仏教全般)

 サンスクリット語で「僧院」「身心の安らぎ」「休息の場所」などの意味。仏教ホスピスに代わる用語として、当時佛教大学の研究員だった田宮仁氏らが1985(昭和60)年に提唱した。その後、医療・福祉と協働し、生死にまつわる人々の苦悩を和らげる仏教徒の活動を「ビハーラ活動」と称するようになった。

【用語解説】地域包括ケアシステム

 誰もが住み慣れた地域で自分らしく最期まで暮らせる社会を目指し、厚生労働省が提唱している仕組み。医療機関と介護施設、自治会などが連携し、予防や生活支援を含めて一体的に高齢者を支える。団塊の世代が75歳以上となる2025年をめどに実現を図っている。 

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