2025年8月7日
※文化時報2025年7月11日号の掲載記事です。
高齢者の暮らしを支える介護保険制度と「車の両輪」として構想された成年後見制度=用語解説=が、導入から25年たって転機を迎えようとしている。法制審議会(法相の諮問機関)の部会が6月10日、見直しに向けた中間試案をまとめた。

現行制度は、いったん利用を始めると途中でやめられず、後見人の交代も原則できないことへの使いにくさが指摘されている。試案では、前者についてはあらかじめ期限を決めたり、必要がなくなればやめられたりする仕組みを検討する。後者については、相性のよくない後見人を交代させるなどの運用を可能にする。
また、報道ではあまり注目されていないが、本人の意思を尊重することが重視されているのも、今回の試案の特色だ。障害者権利条約に基づいて日本政府を審査した国連の委員会が2022年、成年後見制度は障害者の意思決定を妨げているとして、廃止を勧告したことが背景にある。
このため試案は本人の判断能力に個別対応できるよう後見の類型を設計し直すことや、支援の範囲を柔軟に決める方針を掲げた。後見人が本人に必要な情報提供を行い意思を把握する努力義務も盛り込んでいる。
さらに、言葉の印象を和らげて制度の理解を進めようとする狙いから、後見人から「保護者」や「支援人」といった用語に変更することも検討するという。
宗教者にとって、成年後見制度の見直しは決して無関係ではない。お寺や教会には、認知症や死後事務など成年後見制度に関係する相談が、身寄りのない高齢の檀家・門徒や信者を中心に寄せられる。障害のある子が親の世話を受けられなくなる「親なきあと」の悩みを聞く機会も多い。
中間試案はパブリックコメント(意見公募)が始まっており、法制審の部会は寄せられた意見を踏まえて要綱案をまとめるという。宗教者は、自身の経験や当事者たちの声を、制度設計に反映させていくべきだ。
そのためには、檀家・門徒や信者からの相談に真摯(しんし)に乗ることはもちろん、現行制度の問題点や見直しの論点を知る努力が欠かせない。
全国の自治体では、成年後見制度の利用促進を目的とした講演会や研修会が多数開催されている。文化時報の紙面や「福祉仏教入門講座」でも、制度のことは頻繁に取り上げている。こうした機会を積極的に活用してはどうか。
成年後見制度を本当に使いやすい有効な支援の手段にするためには、現場に立って人間の尊厳と向き合う宗教者の智慧(ちえ)が必要である。ぜひ関心を持っていただきたい。
【用語解説】成年後見制度(せいねんこうけんせいど)
認知症や障害などで判断能力が不十分な人に代わって、財産の管理や契約事を行う人(後見人)を選ぶ制度。家庭裁判所が選ぶ法定後見と、判断能力のあるうちに本人があらかじめ選んでおく任意後見がある。