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「文化時報」コラム

〈93〉『大崎事件は問いかける』

2025年12月4日

※文化時報2025年10月3日号の掲載記事です。

 このほど、地元京都の「かもがわ出版」にご縁をいただき、今年2冊目の単著となる『大崎事件は問いかける―これからの再審のかたち』を刊行した。

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 アヤ子さんの潔白をイメージさせる白を基調とした表紙には、アヤ子さんが刑務所から、後に第1次再審請求の弁護団長となる亀田徳一郎弁護士に冤罪(えんざい)を訴えた直筆の手紙を刷り込んだ。

 本書には、大崎事件とは何か、なぜ冤罪となったのか、累次の再審請求で3度も再審開始の決定がなされながら、なぜいまだ再審無罪のゴールに至っていないのかについて、現在に至るまでの経緯を振り返るとともに、大崎事件からあぶり出された再審法の不備と、あるべき法改正の内容、そして再審法改正に向けた国会と法制審議会の最前線の動きを書きつづった。

 私が大崎事件の再審弁護人となって約20年、再審法改正に向けた活動に取り組むようになって約10年が経過した。この間、袴田巖さんの事件や、福井女子中学生殺害事件の相次ぐ再審無罪によって法改正への機運が高まる中で、今一度「大崎事件の再審弁護人」という原点に立ち返って、弁護人として味わった数々の理不尽を思い起こし、そこから再審法改正の最前線までを一気に描きたいと思ったのだ。偉そうな言い方になるが、「今の鴨志田祐美にしか書けない」という自負もある。

 本書には、私が弁護士になる前の、アヤ子さんが第1次再審を申し立てるまでのエピソードについても、アヤ子さんの手紙や当時の記録などから書き起こした。

 日本では、再審事件には国選弁護制度の適用はない。冤罪を訴え、再審を求める者が弁護士につながることは困難だ。そのような中、アヤ子さんからの手紙を受け取った亀田弁護士は、刑務所のアヤ子さんの話を聞くために宮崎の拘置所や佐賀の刑務所に面会に赴き、ついに1995年4月、弁護団長となって再審を申し立てた。

 その7年後、鹿児島地裁で再審開始が決定された2002年に司法試験に合格した私が、翌03年に弁護修習先として配属されたのが亀田弁護士の事務所だった。当時、検察官の即時抗告により福岡高裁宮崎支部に係属していた大崎事件の記録を読み、「こんな酷い冤罪があるのか」と憤ったことが、私のその後の運命を決定づけた。

 修習を終え、弁護士となった直後、福岡高裁宮崎支部は鹿児島地裁の再審開始決定を取り消した。以来4次にわたる再審請求を経て、私たちはまもなく第5次請求を申し立てようとしている。

 真新しい書籍を手にした1週間後、私は亀田弁護士の訃報に接した。再審法の不備で人生を翻弄(ほんろう)されるのは、冤罪被害当事者だけではないのだ。亀田弁護士が切り開いたアヤ子さんの再審を、私は再審無罪を勝ち取るその日まで、闘い続ける。

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