2025年12月5日
※文化時報2025年9月30日号の掲載記事です。
親やきょうだいを自殺によって亡くした子どもたちに対し、宗教者が果たせる役割について考えるフォーラム「自殺/自死で家族を亡くした子どもと宗教者がであうとき」(一般社団法人リヴオン主催)が16日、龍谷大学大宮学舎(京都市下京区)で開かれた。宗派を超えた僧侶や親を亡くした当事者らが、宗教者に何ができるのかを語り合った。(松村一雄)
リヴオンは19歳の時に母親を自殺で亡くした尾角光美さんが、大切な人を失うことによって生じる心の痛みや身体的な不調などをサポートするグリーフ(悲嘆)ケアが当たり前にある社会の実現を目指し、2009(平成21)年に設立。全国の自治体、学校、医療機関、寺院などで講演や研修を行い、喪失に直面した人たちが必要とする支援につながるよう活動している。
フォーラムでは5歳の時に父親を亡くし、30年以上経過してその死因が自殺だったと知らされた豊福麻記さんが、当事者としての人生を振り返り、胸に秘め続けてきた悲しさや苦しさを恩師でもある大谷大学名誉教授の佐賀枝夏文さんと語り合った。

豊福さんは記憶をひもときながら「父の死については『お空に行った』と聞かされたのが最初の記憶だった」と話し、「物心ついたある日に『お父さんは何で死んだの』と尋ねると、母親から『心臓病』と言葉を告げられた」と告白。その結果、家族に不信感を募らせたと語った。
事実を知ったときは「何日も泣き続けた」といい、今でも「娘である私は事実を伝えられるに値しない価値しかなかったのか」と、苦しみから抜け出すことはないと打ち明けた。
佐賀枝さんは教え子の悲しみに触れ、宗教者がどうすればいいのかは「難しい」としながらも、「具体的に手立てをするわけではないが、求められたらそばにいる存在ではないか」と話した。
パネル討論には0歳の時に母親を亡くしたリヴオンのスタッフ森本康平さん、龍谷大学心理学部教授で浄土真宗本願寺派僧侶でもある野呂靖(せい)さん、浄土宗蓮宝寺住職の小川有閑さん、曹洞宗秀林寺住職の遠田旭有(きょくゆう)さんが登壇。自死遺児にどのようなサポートができるのかを考えた。

森本さんは「誰かに話を聞いてほしかったという思いがずっとあった。生きづらさ、しんどさみたいなことを受け止めてくれるお坊さんが近くにいれば、生きやすかったのではないかと感じている」と振り返った。
野呂さんは「もっと宗教者が情報を発信する必要がある。同じ悩みの目線でいることが大切で、そこから対話をすることが重要」と提言。小川さんは「自死は最後まで一生懸命考えて選択した亡くなり方だと思う。命を粗末にしているとか、逃げているとか、悪い死に方だとは全く思わない。ていねいに寄り添って聞くことが大切」と訴えた。
遠田さんは「『いつでも相談してください』という道筋をつくることは、できると思う。自分の持てる力をフル活用して向き合える」と強調した。
一般社団法人リヴオンは岡山県立大と協働で、0~19歳の間に親やきょうだいを自殺で亡くした人を対象に「全国自死遺児500人調査」を実施している。遺児たちが抱える社会的偏見や孤立などの問題を浮き彫りにし、子どもたちとその家族にどのような情報やサポートが必要かを明らかにすることが目的。来春までに500人を対象に行うことを目指す。
16日のフォーラムでは、14歳のときに父親を亡くした同大学保健福祉学部現代福祉学科の大倉高志准教授が調査概要説明と中間報告を行い、「遺児の数が正確に把握されてこなかった」と指摘した。
また、自殺という死因について「子どもが取り残されている現状がある。子どもの側からどう伝えてほしいのか、遺体とどう対面させてほしいのかを明らかにしていきたい」と話し、死別後の情報提供には「宗教者がほぼ関わっていない」との現状を示した。