検索ページへ 検索ページへ
メニュー
メニュー
TOP > 『文化時報』コラム > かも弁護士のヒューマニズム宣言 > 〈78〉法律を作るのは、誰の仕事?

読む

「文化時報」コラム

〈78〉法律を作るのは、誰の仕事?

2025年4月12日 | 2025年4月13日更新

※文化時報2025年1月31日号の掲載記事です。

 タイトルの質問に、日本国憲法は41条でこう答えている。

 「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」

ヒューマニズム宣言サムネイル

 国家の権限を立法・行政・司法に分けて異なる機関に担当させ、権力の均衡と抑制を図る「三権分立」の考え方に基づき、また、国民の自由や権利を制限する法律を作るのは、その国民の代表である議員によって構成される国会であるべきだという「国民主権」の考え方の下、憲法は国会を「国の唯一の立法機関」と定めたのだ。

 このことは、小学校6年の社会科で学ぶこととなっており、誰もが知っているはずである。

 一方、現実の立法は、行政機関である内閣が、それぞれの法律を管轄する省庁に法案を作成させ、内閣提出法案(閣法)として国会に提出し、それを国会が可決して成立するというパターンが多い。2024年の通常国会では、62本の内閣提出法案が提出され、うち61本が可決・成立している。これに対し、国会議員が法案を作成し、国会に提出する議員立法で成立した法案(議法)は、提出された45本のうちわずか8本にとどまった。

 わが国では、内閣の長である内閣総理大臣が、国会議員の中から国会の議決で指名されるという議院内閣制が採用されており(憲法67条1項)、事実上、国会における与党の党首が総理大臣に選出されて内閣を構成するため、内閣提出法案の成立率が高くなるのは、いわば必然といえる。

 しかし、だからと言って、「法を作る」という国の在り方の根幹となる作業を、内閣、実際にはその下にある省庁の官僚たちに任せてしまってよいのだろうか。

 昨年12月20日、再審法(刑事訴訟法第4編「再審」の規定)の改正について、法務省がこの春にも法制審議会(法制審)に諮問する方針であることが報じられた。法制審とは、「法務大臣の諮問に応じて、民事法、刑事法その他法務に関する基本的な事項を調査審議する」ために法務省に設置された審議会で、人事も予算も、議案の選定や進行も法務省のコントロール下に置かれている。

 法務省はつい最近まで、再審法改正には極めて消極的な立場だった。

 それもそのはず、再審手続きを定める刑事訴訟法を所管する法務省刑事局の幹部は検事で占められている。刑事裁判で有罪を主張する役割を負う検事たちが、有罪判決を覆す制度に積極的になれるはずがない。

 しかし、袴田さんの事件を契機に、再審制度の不備を知った国会議員たちが、超党派の議員連盟を立ち上げ、この1月24日に開会した通常国会において、議員立法で再審法を変えようと動き始めている。

 国会には、冤罪(えんざい)被害者を迅速に救済するための法改正というボールを、法務省のタックルによって奪い取られることなく、超党派議員によるスクラムトライを成功させることで、「唯一の立法機関」としての矜持(きょうじ)を見せてほしい。

【用語解説】大崎事件

 1979(昭和54)年10月、鹿児島県大崎町で男性の遺体が自宅横の牛小屋で見つかり、義姉の原口アヤ子さん(当時52)と元夫ら3人が逮捕・起訴された。原口さん以外の3人には知的障害があり、起訴内容を認めて懲役1~8年の判決が確定。原口さんは一貫して無実を訴えたが、81年に懲役10年が確定し、服役した。出所後の95年に再審請求し、第1次請求・第3次請求で計3回、再審開始が認められたものの、検察側が不服を申し立て、福岡高裁宮崎支部(第1次)と最高裁(第3次)で取り消された。2020年3月に第4次再審請求を行い、鹿児島地裁、福岡高裁宮崎支部に続いて最高裁が25年2月、請求を棄却した。

同じカテゴリの最新記事

おすすめ記事

error: コンテンツは保護されています