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「文化時報」コラム

〈91〉私の役割とは

2025年11月6日

※文化時報2025年8月22日号の掲載記事です。

 警視庁公安部によって、いわば事件自体が捏造(ねつぞう)され、検察官もそれを是正せずに違法な起訴を行った(後に起訴取り消し)大川原化工機事件について、警視庁・最高検は7日、それぞれの検証結果を公表した。

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 また同日、2020年に再審無罪となった湖東記念病院事件の西山美香さんが、検察(国)と警察(滋賀県)を訴えた国家賠償請求訴訟で、敗訴が確定した滋賀県警の本部長が美香さんに直接謝罪したというニュースも報じられていた。

 このように、深刻な冤罪(えんざい)をもたらした捜査機関の動向をマスコミが報じていた、まさにその当日、法務省の会議室で開催された法制審議会刑事法(再審関係)部会の第5回会議では、1日に再審無罪が確定した福井女子中学生殺人事件(1日付前回コラム参照)の経緯も含め、警察や検察の不正義がこれほどあらわになっている現状など別の世界の話とでも思っているかのような法務・検察・裁判官・研究者委員たちが、「再審の構造論」(再審はあくまで三審制の例外であり、通常審を超える手続き保障は通常審の軽視につながる)とか、「法的安定性」(確定判決を安易に見直すことは国民の司法に対する信頼を動揺させる)という、相も変わらぬ論陣を張っていた。

 私たち日弁連委員が、冤罪被害者を長期にわたり苦しめてきた、再審法の不備がもたらす理不尽な立法事実をいくら突き付けても、それが他の委員たちに響いている様子はない。

 第5回会議では、再審開始決定に対する検察官の不服申し立て(抗告)を禁止すべきかについて1時間近く議論したが、朝日新聞が「禁止を求めたのは日弁連の委員らだけだった」と報じたように、ますます対立の構図が顕著になっている。

 この法制審で、冤罪被害者の迅速な救済を可能にする再審法改正案がまとまる可能性は、極めて厳しいといわざるを得ない。

 徒労感と閉塞感にさいなまれ、暗い気持ちを引きずったまま、翌8日に開催された大阪・池田市の市民集会の講演で、私は悲惨な冤罪事件の実情と、再審法改正は法制審ではなく、証拠開示ルールと検察官抗告の禁止をしっかりと盛り込んだ議員立法での改正を優先させるべきであることを、力を込めて伝えた。

 すると講演後、「どのような法律にするかは素人には分からないから専門家に任せておけばいいと思っていた。でも、鴨志田さんの分かりやすい説明を聞いて、専門家に任せていてはダメだ、証拠開示や抗告禁止はこうあるべきだ、と自分も声を上げようと思った」と言ってくれた聴衆の言葉にはっと気付いた。

 そうだ。私の役割は、これまで刑事司法や再審法の問題が「難しい」から「他人事」になってしまっていた人たちに、それを分かりやすく伝えて「自分事」にしてもらうことなのだ。

 議員立法による再審法改正を後押しするために、私は己が役割を果たし続ける。

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