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「文化時報」コラム

⑮福祉仏教の扉をたたく

2022年12月27日

※文化時報2022年3月18日号の掲載記事です。

 3月8日、本紙主催の「福祉仏教全国連絡協議会 第6回バイキング講座」で「罪も人も憎まない」と題する講演をさせていただいた。

ヒューマニズム宣言サムネイル

 まず、私が携わった具体的な事件を紹介した。連載第6回と第7回で取り上げた、わが子を手に掛け死傷させてしまった女性たち。アルコール依存から飲酒運転を繰り返した会社社長。家庭を持ち、会社員として更生しようとしたが、周囲の偏見に耐えかねて再び薬物の密売に手を染めた元暴力団員。

 思いを寄せた成人男性に唆され美人局(つつもたせ)の片棒を担がされた少女。発達障害から自宅に引きこもり、漫画本の処理に困って自宅内で灯油をまいて火を付けてしまった少年。実母に虐待され保護された施設で、さらに職員から性的虐待を受けた少女…。

 どれも単に法律を当てはめるだけでは何の解決にもならない事件ばかりである。犯罪に手を染め、あるいは巻き込まれた依頼者が、司法手続きという長くて暗いトンネルを抜けた先の「光差す未来」に向けて第一歩を踏み出すために何をすべきか、悩み考えながら法的支援を行ってきた。 

 しかし、彼ら彼女らの、その後の長い人生に比して、弁護士が関わることのできる時間はごくわずかである。また、弁護士は法律の専門家であっても、医療、福祉、教育、心理などの分野では素人である。それぞれの事件に本気で向き合えば向き合うほど、弁護士だけでは解決できない事柄の多さにぼうぜんとする。 

 それゆえ、現在では刑事事件や少年事件、児童虐待事案などで、多業種の連携によるさまざまな支援の在り方が模索されている。ただ、その支援が肝心な本人を置き去りにしてしまったり、せっかくの善意が制度の壁に阻まれてしまったりと、困難も尽きない。 

 講演を通して、このような現場で福祉仏教に取り組む宗教者とつながることができないか、と切望したところ、すでに更生支援や受刑者の教誨(きょうかい)にも関わっているという何人もの僧侶の方々から、より深く関わるためには何から始めるべきかと質問されるなど、受講者各位の関心の高さをひしひしと感じた。 

 「駆け込み寺」的な居場所としてのお寺の機能、息の長いつながりと「傾聴」に軸足を置く受容力が、司法手続きでは到達できなかった「魂の救済」をもたらすのではないか―。 

 時はまさに花開く春。福祉仏教と手を携えて具体的な活動を始めたい。

【用語解説】大崎事件

 1979(昭和54)年10月、鹿児島県大崎町で男性の遺体が自宅横の牛小屋で見つかり、義姉の原口アヤ子さん(当時52)と元夫ら3人が逮捕・起訴された。原口さん以外の3人には知的障害があり、起訴内容を認めて懲役1~8年の判決が確定。原口さんは一貫して無実を訴えたが、81年に懲役10年が確定し、服役した。出所後の95年に再審請求し、第1次請求・第3次請求で計3回、再審開始が認められたものの、検察側が不服を申し立て、福岡高裁宮崎支部(第1次)と最高裁(第3次)で取り消された。2020年3月に第4次再審請求を行い、鹿児島地裁は22年6月に請求を棄却。弁護団は即時抗告し、審理は福岡高裁宮崎支部に移った。

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