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知ってもらう災害支援 お寺主導で「ごちゃスポ」

2025年7月15日

※文化時報2025年4月8日号の掲載記事です。

 浄土宗願生寺(大阪市住吉区)の大河内大博住職が共同代表を務める「さっとさんがLab」は3月30日、大阪市長居障がい者スポーツセンター体育館(同市東住吉区)で「第2回長居公園通りごちゃまぜスポーツ大会(ごちゃスポ)」を開催した。要支援者の存在を地域に知ってもらうことで災害時に対応できるようにする取り組み。障害の有無や年齢、性別を問わず約120人が参加し、大河内住職は「安心・安全な中で居心地よく過ごしてもらえている」と手ごたえを語った。(大橋学修)

 願生寺は、2021年9月に防災プロジェクトを始動させ、災害時に医療的ケア児=用語解説=を受け入れる方針。地域で暮らす障害のある人の存在を知ってもらうことが、緊急時の支援につながるという発想で、昨年から「ごちゃスポ」を開いている。

 就労継続支援施設や放課後等デイサービス=用語解説=などを利用する人たちとその家族、地域住民らが参加。木の棒を投げてピンを倒し得点を競う「ミニらいとモルック」など五つの競技を楽しんだ。

 持ち玉を目標の近くに転がす競技「ボッチャ」では、視線入力装置を使って玉を出す機材も導入。医療的ケア児のわが子のプレーを見た父親は「意識して物を見ているのか分からなかったが、画面を目で追っているのを見ることができた」と目を輝かせた。

視線入力装置で「ボッチャ」を楽しむ参加者
視線入力装置で「ボッチャ」を楽しむ参加者

 会場の運営には、大阪教育大学や大阪信愛学院大学、千里金蘭大学、大阪大学大学院の学生たちのほか、願生寺の「寺子屋さっとさんが」で活動する市立墨江丘中学校の生徒もボランティアとして参加した。中学2年の児玉葵さんは「車いすの人も、そうでない人も関係なく楽しんでもらえた」と笑顔を見せた。

 大阪信愛学院大学看護学部看護学科の阪上由美准教授は「学生たちは心から楽しんでサポートし、参加した保護者ともうまくコミュニケーションが取れていた。それが学生たちの成長にもつながる」と話した。

 大阪信愛学院大学看護学部看護学科の阪上由美准教授は「学生たちは心から楽しんでサポートし、参加した保護者ともうまくコミュニケーションが取れていた。それが学生たちの成長にもつながる」と話した。

遠慮を超えて助け合い

 願生寺は地元住民と共に、災害時の障害のある人への支援を考えるワークショップを繰り返し開催している。その中で、要支援者の存在が認知されていないことが課題になっている。

 東住吉区の横井典子さんは、マンションの12階に住んでおり、バギー型車いすが必要なわが子と避難するときに手助けがほしいと感じている。市の防災担当から民生委員を紹介されたが、顔も知らない人に支援を求めることに遠慮があった。

防災ワークショップで参加者と話す大河内住職(右)
防災ワークショップで参加者と話す大河内住職(右)

 横井さんは、わが子の通う支援学校から紹介され、今回初めて「ごちゃスポ」に参加した。「スポーツを通じて、地域の人と自然に知り合えるようになればと思って来た。普通の防災研修会なら参加することはなかったと思う」と話した。

 会場には、防災ワークショップコーナーも開設された。災害発生時に役立つグッズの紹介と共に、参加者それぞれが「助けてほしいこと」「助けられること」を書き込んだカードを貼り付けるメッセージボードも用意した。

 「助けてほしいこと」で多かったのは、「声を掛けてほしい」「移動を手伝ってほしい」という内容。「子どもが音に敏感なので、静かな場所があると助かる」というメッセージもあった。一方、「助けられること」では「声を掛ける」「車いすを押す」などがあり、大河内住職は「防災ブースのワークショップにも多くの人が参加していた。災害時への意識を持ってもらうことができた」と振り返った。

 

【用語解説】医療的ケア児

 人工呼吸器や胃ろうなどを使用し、痰(たん)の吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な児童。厚生労働省によると、2021年度時点で全国に約2万180人いると推計されている。社会全体で生活を支えることを目的に、国や自治体に支援の責務があると明記した医療的ケア児支援法が21年6月に成立、9月に施行された。

【用語解説】放課後等デイサービス

 6~18歳の障害児や発達に特性のある子どもが、放課後や夏休みなどに利用できる通所サービス。自立支援や日常生活の充実のための活動などを行っている。全国で約28万人が利用している

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