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智慧と慈悲でケア育む 浅草・山谷地域で学会開催

2025年10月15日

※文化時報2025年7月11日号の掲載記事です。

 日本仏教看護・ビハーラ学会(今井洋介会長)は6月28、29日の両日、東京都内で第21回年次大会を開いた。「慈愛の花を咲かせましょう~寄る辺(べ)なき者、共に生きる」をテーマに、2日間で医療・仏教関係者約150人が参加。日雇い労働者のまちとして知られる浅草・山谷地域で、ケアについて考えた。(山根陽一)

 28日は浄土宗回向院(東京都荒川区)で、大会長の吉水岳彦浄土宗光照院(台東区)住職が登壇。戦後80年の節目に、戦後復興を支えた山谷で開催する意義を伝え、「真の包摂的な社会を作るため、ケアの文化を支え、育んだ人々と共に智慧(ちえ)と慈愛を届けましょう」とあいさつした。

 長岡西病院(新潟県長岡市)ビハーラ病棟医師の今井会長が基調講演。自身の学生時代の葛藤や山谷でのボランティア活動で学んだ教訓を伝えながら「利他の心が集まれば、世界最先端の支え合う場所になる」と訴えた。

(画像:基調講演を行う今井会長=6月28日、浄土宗回向院)
基調講演を行う今井会長=6月28日、浄土宗回向院

 また、終末期病棟で「おなかの中に何もない、空っぽの今が一番幸せ」と、花火を見ながらつぶやいた患者のエピソードを紹介し、仏教の説く「空」にもつながると語った。
 
 基調講演後のシンポジウムでは、山谷で活動するNPO法人自立支援センターふるさとの会の的場由木さん、NPO法人訪問看護ステーションコスモス所長の平野智子さん、認定NPO法人山友会副代表の油井和徳さん、路上生活経験者の男性が、最期まで支えるケアの在り方をテーマに討議した。

 的場さんは、高齢者の居場所づくりから始まったふるさとの会の活動を紹介し、「看取(みと)りの場をつくり、『人生は大変だったけど、最期は孤独ではなかった』と思える環境を整えたい」と述べた。

 平野さんは、誰も孤立させないまちづくりを進める上で重要なのは「個性的な看護師が大勢いること」と指摘し、さまざまな団体が連携する意義を強調。油井さんは無料診療、生活相談、給食サービス、居住支援などを行う山友会の取り組みを伝えた。

(画像アイキャッチ兼用:会場には多くの医療・仏教関係者らが集まった)
会場には多くの医療・仏教関係者らが集まった

 光照院に設置した路上生活者の共同墓地について言及すると、路上生活経験者の男性は「死んだ後はホームレスじゃなくなるのでありがたい」と笑顔を見せた。

ドヤ街をまちあるき

 年次大会前には、台東区と荒川区にまたがるエリアの「山谷まちあるきツアー」を行い、約30人が参加した。

 山谷は江戸時代に刑場があり、第2次世界大戦後は貧困の街「ドヤ街」となった暗い歴史を背負う。そこに集まる多くの人々を救う施設を訪問し、路上生活者の実情や課題を聞いた。ボランティアスタッフからは「高齢者が多く、本当はいるはずの若者の姿がない」との問題提起もあった。

 29日は聖観音宗浅草寺(台東区)で「生活困窮者の看護ケアに仏教が果たした役割~浅草寺病院の歩みから」をテーマにシンポジウムを行った。明治時代に災害被害者らに念仏堂を開放した救済を起源とする浅草寺病院の医療看護活動や仏教的背景について、医療者や研究者が討議した。

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