2025年11月14日
※文化時報2025年9月16日号の掲載記事です。
障害の有無にかかわらず、しかるべき対価を得ながら働きがいのある仕事ができるために必要な「収益化」の観点とプロセスを学ぼうと、佛教大学総合研究所は二条キャンパス(京都市中京区)で公開研究会を行った。NPO法人ディーセントワーク・ラボ上席研究員で社会福祉士の船谷博生さん(58)が、「働きがいのある人間らしい仕事」を指す「ディーセントワーク」と事業収益化を図る方法について講演した。(坂本由理)
船谷さんは明治大学社会学部を卒業後、東京都港区で9年間ケースワーカーとして勤務。松下電工(現・パナソニック)で介護事業所の企画・立ち上げに関わり、現在は日本最大のバニラ農園を障害者と共に運営するプロジェクトを手掛けている。

船谷さんは福祉の現場で働きながら、就労継続支援B型事業所=用語解説=の工賃の低さなどを通じ、いかに福祉と社会がかけ離れているかを実感したという。
「福祉と社会をつなぐ」と決意し、有名シェフらの協力を得ながら、お菓子の商品開発やパッケージデザインを通して商品をブランド化する「テミルプロジェクト」をスタート。国内でほぼ育てられていなかったバニラを沖縄で栽培する試みも始めた。沖縄が抱える貧困問題に気付き、貧困から脱出するための仕組みづくりも目指している。
公開研究会は8月4日に開催され、船谷さんは講演で、大切なのは共感であり、他人事から自分事に変えてもらうには「思い」「言葉」「対話」の三つの力が必要だと強調。「私たちを応援してくれる投資家は、資金を回収することよりも、そのプロジェクトでどれだけの人が笑顔になるのかを知りたがっている」と語った。
また、障害者の働きがいと事業収益化を両立させ、貧困のないまちづくりに向けて「共感で事業をつくる。事業で渦をつくる。渦でまちをつくる。まちで人をつくる」と抱負を述べた。
【用語解説】就労継続支援B型事業所
一般企業で働くことが難しい障害者が、軽作業などを通じた就労の機会や訓練を受けられる福祉事業所。障害者総合支援法に基づいている。工賃が支払われるが、雇用契約を結ばないため、最低賃金は適用されない。