2025年11月17日
※文化時報2025年9月19日号の掲載記事です。写真はイメージです。
阪神宗教者の会(代表世話人・岩村義雄牧師)はオンラインで例会を開き、神戸国際支縁機構理事で東京大学名誉教授の島薗進氏が「着床前検査など生殖補助医療の倫理的課題」をテーマに講演した。
島薗氏は臓器移植を含む「命の選別」に関する多くの著書がある。例会は8月22日に行われた。
講演ではまず、米国でブタの心臓を人間に移植する手術が成功し、10万人以上が移植を待つリストに入っていることや、臓器を提供できるブタを育成する企業が現れるなど、臓器移植がビジネスになりつつある実態を紹介。人間の心臓を持つブタをつくる研究が進んでいるとも指摘した。

東京都が卵子凍結や凍結卵子を使用した生殖補助医療に助成制度を設けるなど、卵子凍結が少子化対策の切り札とみなされている現状に関しては、高齢妊娠の増加では全体的な出生数の減少は解消せず、むしろ少子高齢化が加速するとの見通しを示した。
着床前検査(着床前診断=用語解説)に対しては、異常が見つかると人工妊娠中絶を選ぶ人がかなりの数を占めるとして、「命や性の選別につながる」と懸念を示した。将来的には能力や病気によって、命を受精卵の段階で選択するようになると危惧した。
また遺伝子操作については「人間の品種改良につながる」として、いったん導入すると元に戻すのは困難だと警鐘を鳴らした。アジアと欧米の価値観を比較した上で、「文化の相違を前提にしながら人類共通の規範を作る必要がある」と提唱した。
【用語解説】着床前診断
体外受精で得られた胚(受精卵が複数の細胞に分裂したもの)の染色体や遺伝子などを調べ、子宮に移植する胚を選ぶ技術。妊娠率の向上や流産・死産を防ぐ目的とした検査のほか、重篤な遺伝性疾患を子どもに受け継がせないための検査(PGT―M)がある。日本産科婦人科学会が1998(平成10)年に容認し、申請に基づき検査の可否を1件ごとに審査。2022年に審査基準を緩和した。新型出生前診断(NIPT)同様、障害・疾患への偏見を助長する恐れが指摘されている。