2025年12月25日
※文化時報2025年11月4日号の掲載記事です。
子どもたちの大きな笑い声が本堂に響く。辞書を引いて漢字の書き取りの宿題をする子の横で将棋を指す子。大阪・関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」のぬいぐるみと一緒に畳の上に寝転がったり走り回ったりする少年の姿。奥の部屋ではおもちゃの電車を走らせて騒いでいる。浄土真宗本願寺派善念寺(大阪市西淀川区)が月に1度開く「にしよど子ども食堂 なもなも」の〝ごった煮〟の風景だ。(松村一雄)
同食堂は2020年10月にオープン。代表で同寺坊守の八木宝加さん(63)が「ずっとやりたいと思っていた」ことを実現させた。
食堂名の「なもなも」は、本尊・阿弥陀如来が全ての人々を救うとの願いを込めた「南無阿弥陀仏(なもあみだぶつ)」の「南無」から名付けた。「当時は今みたいに子ども食堂が多くなかったのでやり方が分からなかった」と八木さんは振り返る。

その中で地域や西淀川区社会福祉協議会、大阪市社協などを駆けずり回り、協力を得ながらオープンにこぎ着けた。
オープン以来、さまざまなアイデアをひねり出しながら食堂を展開。平均すると約50人の子どもたちが集まってくる。入り口にあふれんばかりの自転車が並ぶほどだ。
みそ作りや流しそうめん、スイカ割りに三色団子作り、フィギュア制作に遠足など、全ては子ども目線でイベントを企画してきた。
子どもたちが包丁を握って料理することも日常茶飯事。コロナ禍で中止を余儀なくされたこともあったが、その時は無農薬の食材を使用したスタッフ手作りのお弁当を配布した。
総合工芸施設の大阪市立クラフトパーク(大阪市平野区)や地元に本社があるグリコの協力も得ながら、出前授業も行ってきた。「いろいろな出会いがありがたい。やればやるほど楽しいし、毎回楽しんでいる。スタッフにも恵まれていて、みんなが力を合わせれば何かができる」と、八木さんは実感している。

昨年の夏から4人の子どもと一緒に参加している母親(45)は「この場所は本当にありがたい。お母さん同士でいろいろな話ができるし、相談もできる」と話す。地域の子どもたちに声をかけたり、地域行事に積極的に出かけたりするようになり、制服のお下がりを渡す交流も広がったという。
小学5年と4年の姉妹は「ここは面白い。最初は知らない子がいっぱいいて行きづらかったけど、友達や、しゃべる子が増えた」と笑顔。2年の女子児童は「幼稚園のときの友達と会えるから楽しい」、別の女児は「なもなもは楽しみ」と声を弾ませる。
八木さんはほぼ毎日、午前8時半から同9時半まで、地元の小学校に授業のサポートに行く。子どもたちの様子を見ていると、目の当たりにする深刻な現実も少なくはない。
「学校が楽しくなくて休んでいる子もいるし、地力があるけど、ほったらかしにされている子もいる。一人一人の才能は素晴らしいのに、家庭環境に恵まれない子どもは残念」

その上で、「通信手段があってなもなもに来てくれる子どもたちは幸せ。本当に困っている子どもは、面倒くさがって、迎えに行っても来てくれない。この差をどう理解すればいいか」と、手の差し伸べ方にも頭を悩ませる。
「誰か一人でも救われたらいいよね」。オープン当初にスタッフと一緒に刻んだ気持ちは、今も色あせることはない。「いつまでできるか分からないけど、悩みながら頑張る」と八木さんは前を向く。
そして、こう付け加える。
「もう少し学習支援がしたい。子どもたちが成人したときに、一人で生きていける力をつけられるように」