2026年2月17日
※文化時報2026年1月13日号の掲載記事です。
真言宗大覚寺派成福院(今井弘道住職、兵庫県宝塚市)は昨年12月14日、釈尊が悟りを開いたことを祝う成道会と、障害のある子を持つ親の分かち合いの場「親あるあいだの語らいカフェ」を開いた。参加者25人は、ダウン症で右手の欠損があるピアニストの鈴木凜太朗さん(34)によるコンサートや、寺庭婦人の今井薫さんお手製の大根炊きを楽しみながら交流した。(大橋学修)
成道会では、般若心経や釈尊の真言を唱えた後、今井住職が法話の代わりに釈尊の生涯を伝える紙芝居を披露。成道前の釈尊が王城の四つの門から外に出て、老人、病人、死者、修行者に出会って生老病死の四苦を知り、出家を決意した「四門出遊」の逸話を伝えた。その上で「仏教は死だけを扱うように思うかもしれないが、生きているときの支えにもなる」と話した。

今井住職は、12月14日が赤穂義士の討ち入りの日だったこともあり、紙芝居「忠臣蔵」も上演した。大根炊きの接待では、参加者が熱々の大根を頬張りながら、よもやま話に花を咲かせた。
鈴木さんは、手首から先が欠損した右手と左手を駆使して、ベートーベンのピアノ・ソナタ第8番「悲愴」第2楽章などを演奏。父の正人さん(66)との連弾も行った。ホールと異なって聴衆との距離が近かっただけに、最初は緊張していたが、終了後には「楽しかった」と笑顔を見せた。

演奏前には母の真己子(まきこ)さん(62)が、鈴木さんの誕生から現在に至るまでの心境の変化を説明。「福祉や医療、介護の情報が何も得られず、絶望したまま5年ほどひきこもり、クリニックと自宅を往復するだけだった」と振り返った。
幼稚園に入園し、右手の欠損に気付いた子どもたちから「ごはんはどうしているの? トイレはどうしているの?」と純粋に心配する声を聞いて、「障害にとらわれていたのは、私だった」と気付いたという。
学校で覚えた歌「きらきら星」を鈴木さんが自宅で弾いたのがきっかけで、エレクトーンを習いに行くようになり、「彼にもできることがある」と思うようになったことを伝えた。
今では、就労継続支援B型事業所=用語解説=が運営する茶房で働きながら、自宅で毎日2時間、ピアノの練習をしている。
真己子さんは「達成感を感じる姿に、明日を信じることを学んでいる」と話した。
「親あるあいだの語らいカフェ」は、成福院が一般財団法人お寺と教会の親なきあと相談室(小野木康雄代表理事、京都市下京区)の宝塚市成福院支部を開いた2024年9月に初開催し、今回で6回目になる。

上智大学グリーフケア研究所で学んだ寺庭婦人の薫さんが毎月1日に開く朝活の会「平林寺がひらいてる朝」や「生きるのヘタ会?」に参加している4人が参加した。
わが子の就業先が見つからない、地域に頼れる人がいないといった悩みが持ち寄られ、初めて参加した母親は「親がいなくなった後、障害のある子どものきょうだいに負担がかかる」と不安を口にした。
自閉症の息子とともに訪れた、お寺と教会の親なきあと相談室のアドバイザーを務める清元由美子さんは「息子にとってお寺が頼れる場所になってほしいと思い、一緒に参加している。最近は、来るのが当たり前だと思うようになってくれている」と話した。

【用語解説】就労継続支援B型事業所
一般企業で働くことが難しい障害者が、軽作業などを通じた就労の機会や訓練を受けられる福祉事業所。障害者総合支援法に基づいている。工賃が支払われるが、雇用契約を結ばないため、最低賃金は適用されない。