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「鎌倉エフエム」社長は住職 朝比奈惠温さん

2023年7月15日

※文化時報2023年6月6日号の掲載記事です。

 神奈川県鎌倉市で放送されるコミュニティFM「鎌倉エフエム放送」の社長を務めるのは、臨済宗円覚寺派浄智寺(神奈川県鎌倉市)の朝比奈惠温(えおん)住職(59)だ。僧侶として築いてきた人脈を生かし、地域の防災、防犯、交通、商業情報などを発信している。種々雑多なインターネットの「通信」とは異なり、許認可を要する「放送」だからこそ価値があり、地域に特化した情報の信頼度も高いと考えている。(山根陽一)

消防団の隣から発信

 浄智寺は鎌倉五山=用語解説=の一つに数えられる名刹(めいさつ)。コロナ禍が一段落した現在は内外から多くの観光客が訪れ、活気を取り戻しつつある。朝比奈住職は境内を開放し、ライブ演奏や坐禅会、朗読などの文化イベントも実施。3月には声優の小河知夏さんによる「語り劇」を開いた。

浄智寺の本堂・曇華殿
浄智寺の本堂・曇華殿

 「常に新しいものを取り入れるのは臨済宗の特徴。800年前の鎌倉時代、禅を取り入れた最先端の仏教だった」と語る。

 鎌倉エフエム放送では、他のメディアがあまり取り上げない地域の生活に根差した情報を発信する。中でも非常時の最新情報については、鎌倉市消防団の詰め所に隣接したスタジオの特性を生かし、災害時に最前線から得た情報をリアルタイムで放送できるという。「放送は通信と違い、非常時でもほとんどリスクなく情報を届けられる。許認可事業者としての責任も重く、電波の強みを生かした媒体でありたい」という。

 鎌倉エフエム放送は1994(平成6)年、市や商工会議所、地元企業などが出資し、県内4番目のコミュニティFM局として開局した。現在は平日に5時間の生放送を実施。パーソナリティーを務めるミュージシャンや女優らが、交通・天気から医療・福祉、文化・催事などのきめ細かい情報を届ける。

 質の高い音楽番組にも定評があり、ジャズ、ハワイアン、クラシック、サンバ、カントリーなど幅広いジャンルを扱っていて、ファンも多い。

消防団の詰め所が隣にある鎌倉エフエム放送の社屋
消防団の詰め所が隣にある鎌倉エフエム放送の社屋

 朝比奈住職は2018年から役員として入社し、20年に社長に就任した。「当初は名前貸し程度の気持ちだった」というが、父親の朝比奈宗泉前住職がかつてTBSラジオ関連の企業に勤務しており、朝比奈住職自身もラジオを組み立てアマチュア無線に夢中になった経験があったことから、電波には縁があったという。

在家の修行者に学ぶ

 朝比奈住職は浄智寺の長男として生まれた。祖父は大本山円覚寺の管長を務めた朝比奈宗源氏。幼い頃から「自分も僧侶になるだろう」と感じていたが、強い熱意はなかった。

 だが、大学卒業後に円覚寺の修行道場で在家の人が真剣に鍛錬する姿が「寺に生まれた自分の浮ついた心を一喝してくれた。人は人によって生かされていることを学んだ」。その後は円覚寺で経験を積み、自坊に戻って住職となった。今では鎌倉市教育委員も務める。

 住職兼社長という忙しい日々を送るが、体の芯にあるのは僧侶としての自覚と心構えだ。東日本大震災の少し後、鶴岡八幡宮で鎌倉宗教者会議を開催中、余震があった。その時に一般の来場者を誘導したが、「お坊さんがいるから全然怖くなかった」と言ってもらえたという。

 「日本人の心の奥底には僧侶への信頼と敬意が潜んでいる。その思いに恥じない存在になることが私たちの務めである」と話した。

 鎌倉エフエムでは月に1回「鎌倉お寺トークナビ」という番組を実施し、僧侶が交代でさまざまな話題を語っている。番組はJCBAインターネットサイマルラジオのホームページ(https://www.jcbasimul.com/kamakurafm)から聴ける。

【用語解説】鎌倉五山(臨済宗)

 臨済宗の禅寺の寺格で鎌倉市にある建長寺、円覚寺、寿福寺、浄智寺、浄妙寺の5寺を指す。中国の制度にならい北条氏が導入したとされる。

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