2024年7月25日 | 2024年8月27日更新
障害のある人の親やきょうだいなど親族の立場にある専門家たちでつくる一般社団法人「親なきあと」相談室関西ネットワーク(藤原由親・藤井奈緒代表理事)は5月26日、大阪市立青少年センター(大阪市東淀川区)で第40回セミナーを開いた。国立重度知的障害者総合施設のぞみの園(群馬県高崎市)の参事で看護師の根本昌彦さんが登壇。知的障害や発達障害があって意思表示が難しい人たちの健康支援について語った。
のぞみの園は、重度の知的障害のある人たちが生涯を暮らす「国立コロニー」として開設された。現在は、地域で生活するための「地域移行」が進む一方、強度行動障害のある人や医療的ケアの必要な人などを受け入れている。
根本さんは、かつて東京都職員としてさまざまな福祉施設で勤務した経験があり、のぞみの園ではターミナルケアなどに携わっている。
セミナーで根本さんは、知的・発達障害のある人が病院にかかるとき、理解することや表現することが苦手なため「受診のしづらさ」を抱えると指摘。自分で予防するのが難しく、周囲も気付きにくいことから、「病気になりやすく、症状の悪化も急だ」と説明した。
その割には「3分間診療」と称されるほど受診時間が短いことや、障害のある人への健康診断が不十分なことなどが、早期発見を妨げていると強調。
「当たり前に健康が守られる社会の仕組みを、受けたいのに受けられないことが、障害者にとっては最後に残された人権問題ではないか」と述べた。
予防で大事なこととしては、良い食習慣や排泄(はいせつ)習慣、風呂で髪や体をきちんと洗えること、手足の爪を正しく切れること、口内を清潔に保てることなどを挙げた。
周囲が気付ける二次予防としては、体温、脈拍、呼吸などに注目することであり、「関心を持とう。『何か変だな』ということに気付こう」と呼び掛けた。
また、知的・発達障害のある人が納得して治療を受けるためには、内容を十分理解できなさそうだと感じても、医療者や支援者が手を抜かずに説明することで、真剣さを伝える必要があるのではないかと語った。
さらに、意思決定支援とは、障害者権利条約に関わる運動のスローガン「私たちのことを、私たち抜きで決めないで」(Nothing about us without us)と「どんなに重い障害があっても〝意思〟がある」の二つであるとし、「意思を無視して、医療が行われるべきではない」と訴えた。