2024年7月20日
※文化時報2024年5月24日号の掲載記事です。
一般社団法人東京難病協会(井上信雄代表理事)は11日、東京都難病ピア相談室(東京都渋谷区)で市民講座を開き、医師で慶應義塾大学名誉教授の加藤眞三氏と臨済宗妙心寺派龍津寺(静岡市清水区)の勝野秀敏住職が対談した。テーマは「生きることと死ぬこと」で、オンラインを含め約60人が聴講した。(山根陽一)
東京難病協会は、医療従事者と連携しながら難病患者や家族の生活を支援する団体で、相談や交流会、講演会などを行っている。今回は一般にも無料で公開した。
加藤氏は、終末期医療や「患者学」の専門家で、上智大学グリーフケア研究所にも所属している。
対談では、病気にかかることと元気でいることは両立するとし、「難病で生きることを諦めるのではなく、新しい生活を始める気持ちを持ってほしい」と求めた。
医療の進歩にも言及し「治るという希望を持ち、自分自身で生き方の選択肢を増やせる時代だ」と強調。心のケアを担う宗教者の役割も重要であり、家族とともに生活の中に溶け込んでほしいと呼び掛けた。
勝野住職は認定臨床宗教師として、2017年から静岡市内の緩和ケア病棟などで傾聴ボランティアを行っている。ひきこもりを経験し自殺願望があったという過去を語り「死生観に答えはない」と説いた。
その上で、「いつか迎える死を避けられない以上、希望をもって生きることが大切。仏教の教えは全ての存在を全肯定している」と指摘。「憲法13条で幸福追求権が認められている通り、どんな人にも幸せに生きる権利がある。宗教者は教義や宗派を超えて、生きる人々に寄り添い、幸福を分かち合う手伝いをするべきだ」と語った。
対談後は、指定難病の網膜色素変性症の患者である井上代表理事も登壇。「同じ病気の人と会い、話すことが希望につながる」と語った上で、指定を受けていない希少難病への助成が少ない現状を改善するよう訴えた。
難病患者の就労支援を行っているという松本留美さんは「生まれた時から誰もが死に向かっており、終末期であることを実感した。だからこそ、何ができるかを考えて生きることが、その人らしい人生になるのではないか」と感想を話した。