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命は本当に平等か 本紙主筆、早大で講義

2023年8月26日

※文化時報2023年7月11日号の掲載記事です。

 早稲田大学文学学術院(東京都新宿区)の前期授業「生と死の教育」が6月27日に行われ、今年度のゲスト講師として、文化時報社の小野木康雄主筆が「新聞が伝える生と死の現場―宗教専門紙の視点から」と題して講義を行った。学生約180人を前に、宗教や報道機関が命の問題をどう伝えているかについて、持論を述べた。

 小野木主筆は、文化時報社のミッション「社会と宗教をつなぐ」を実現するための紙面づくりや、新聞の枠を超えた活動について紹介。1995(平成7)年の阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件などを機に「命は本当に平等か」との問いを持ち、生と死に関する報道を続けてきたと語った。

 その上で、今後のテーマとして、緩和ケア病棟などにおける宗教者の傾聴活動に加えて、あいまいな喪失=用語解説=やペットロスに注目していると指摘。「全ての社会活動は、平和な世の中だからこそ成り立つ」と強調し、戦争と平和に関する報道にも力を入れていく考えを示した。

小野木主筆の講義を聴く早稲田大学の学生たち
小野木主筆の講義を聴く早稲田大学の学生たち

 講義後、文化構想学部1年の大川賢一さん(19)は「社会には宗教アレルギーがある半面、倫理が追い付いていないという話が印象に残った。技術や身体性の拡張は進んでいるが、精神性の拡張に必要なのが宗教なのかもしれない」と感想を語った。

 一方で大川さんは「お寺の話が多かったが、文化時報は仏教以外の宗教をどう扱っているのか」と問題提起。「現代は宗教を持つことがマイノリティー。さまざまな宗教が相互理解を深め、横一列に並ぶところから始めるべきだ」と話した。

宗教の英知 活用を

 早稲田大学文学学術院の「生と死の教育」は、久保田治助(はるすけ)教授(社会教育学)が昨年度に始めた授業。生と死という繊細な問題について、世の中にどう教育・啓発していくかを考えている。

久保田治助教授
久保田治助教授

 全14コマの講義では、自死を巡る報道や学校現場における命の教育などを取り上げている。昨年度は、宗教が生と死の啓発にどう関わってきたのかについて、浄土真宗本願寺派妙行寺(鹿児島市)の井上從昭住職がゲスト講師となり、自坊での活動などを紹介した。

 久保田教授は「『教え』に基づく宗教の伝え方は素晴らしい。宗教の英知を活用しないで生と死について語ることは難しい」と指摘する。

 今後は「生と死の教育」を学問として構築することが目標。青少年や大人に、生と死に関する情報をどう知らせるか。高齢者をいかに理解し、生きる喜びをどう感じてもらうか―。「世代ごとに課題は異なる。時代に応じて伝え方を変える必要もある」と話している。

【用語解説】あいまいな喪失

 当たり前にあった日常が大きく変化してしまったが、何を失ったのかがはっきりしないという不確実な状況のこと。米社会心理学者のポーリン・ボス(Pauline Boss)博士は「はっきりしないまま残り、解決することも決着を見ることも不可能な喪失体験」と定義。「何がストレスの原因かを知ることが大切」としている。

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