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「開かずの扉」見直しを 再審法改正目指す研究会

2024年5月25日

※文化時報2024年4月5日号の掲載記事です。

 刑事裁判をやり直す再審に関する刑事訴訟法の規定(再審法)を改正するための研究会が3月23日、龍谷大学深草学舎(京都市伏見区)で、オンライン併用で開かれた。研究者や実務家、再審や誤判救済に関心を持つジャーナリストなど約30人が参加し、現状と課題への理解を深めた。

(画像アイキャッチ兼用:研究会はオンライン併用で行われた)
研究会はオンライン併用で行われた

 刑事司法の改善に取り組む「龍谷大学刑事司法・誤判救済研究センター」が主催した。袴田事件=用語解説=などで問題視されているように、冤罪(えんざい)被害からの救済を図る日本の再審制度は「開かずの扉」と言われるほどハードルが高い。刑事訴訟法にわずか19条の条文しかなく、審理の進め方などの定めがないため、裁判官の裁量に委ねられているのが要因の一つとなっている。

 研究会ではまず、斎藤司センター長が再審法を巡る議論の現状を説明。これまで中心としてきた刑事訴訟法の解釈論だけでなく、立法論の観点からも考えることが重要だと伝えた。

 続いて、日弁連再審法改正実現本部本部長代行の鴨志田祐美弁護士(京都弁護士会)が登壇し、再審法改正運動の歴史や問題点を指摘。1949(昭和24)年の刑事訴訟法施行から75年間、一度も改正されることがなかった再審法の不備を浮き彫りにし、再審における証拠開示のルールづくりや、検察による不服申し立ての禁止を盛り込む必要性を訴えた。

 また、鴨志田弁護士は最近、多くの地方議会で再審法改正を求める意見書が採択されたり、再審法改正を考える超党派の国会議員の動きが活発化したりしていることも報告。「再審法が世間の注目を集めている今、この時機を逸してはならない。本日の議論が法改正を後押しするものであることを願う」と呼び掛けた。

 後藤昭(あきら)一橋大学・青山学院大学名誉教授は「『誤判からの迅速な救済』という誰も反対できない分かりやすい目的を掲げ、議員らに働きかけることは非常に強力だ」と強調。一方で「被告人の権利を拡充する立法には、法務官僚・警察官僚の反対が強い。実現には司法取引や刑事免責、通信傍受拡大など、官僚たちが望む何かとの抱き合わせが現実的だ」と私見を述べた。

 葛野尋之・青山学院大学教授は総括として、「課題は多いが、いずれも世論を考えると急ぐべき内容だ。今後も意見を交わし、研究を深めていきたい」と語った。

【用語解説】袴田事件

1966(昭和41)年に静岡県で起きた一家4人殺害事件。強盗殺人罪などで起訴された袴田巌さんは公判で無罪を訴えたが、80年に最高裁で死刑が確定した。裁判のやり直しを求める再審請求を受け、2014(平成26)年3月に静岡地裁が再審開始を決定。袴田さんは釈放された。
 検察側の即時抗告によって東京高裁が決定を取り消したものの、最高裁が差し戻し。東京高裁は23(令和5)年3月、捜査機関が証拠を捏造(ねつぞう)した可能性が「極めて高い」として、改めて再審開始決定を出し、検察側は特別抗告を断念した。同年10月から静岡地裁で再審公判が始まった。

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