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仕事をしないのは〝文化〟幸教寺で「無職酒場」

2024年6月30日

※文化時報2024年5月14日号の掲載記事です。

 大阪市生野区の浄土真宗本願寺派幸教寺(石原政洋住職)で、仕事をしないことの意味を考える「無職酒場」が初めて開かれた。無職を〝文化〟として肯定的に捉えようとする団体が行っているイベントで、社会的処方=用語解説=に宗教が役立つと考える大阪公立大学付属病院の大植堯文医師が石原住職に開催を持ち掛けた。仕事に就く人は千円、無職の人は無料で参加し、お酒をくみ交わしながら語り合った。(大橋学修)

 4月21日。本堂に並べた長机に、参加者が持ち寄ったたこ焼きや巻きずしが並んだ。参加者は、受付で配られた駄菓子をつまみに、それぞれが注文したビールやハイボールをあおりながら交流した。京都市の長尾優佑さんは「いろんな方がいて、よく分からない状態だけど、それがいいんじゃないか」と評価した。

(画像①アイキャッチ兼用無職酒場:「無職酒場」で参加者と談笑する大植医師(右)=21日、幸教寺)
「無職酒場」で参加者と談笑する大植医師(右)=21日、幸教寺

 大阪市の新村大さんは、大手スーパーが提供する独自ブランドのウイスキーにオーク樽(たる)のかけらを漬け込んだり、化学調味料を添加したりした酒など数種類を持ち込んだ。調味料入りの酒を口にした男性は「うま味を加えたからといって、おいしくなるものでもない」と笑った。

 会の冒頭では、石原住職が法話を行った。無職の「無」の字を用いた単語を参加者から募り、それぞれがポジティブな言葉かネガティブかを仕分けて、ホワイトボードに書き込んだ。

 ものの見方によって、それぞれの言葉は前向きにも後ろ向きにも捉えられることを伝え、いずれにも偏らないことを説く仏教の教え「中道」について解説。「二元論に陥らない自由な立場にあれば、いかようにもできて楽になる」と伝えた。

 石原住職の法話を受けて、大植医師は「無職と有職の間にあるのが住職。だから、今日は住職の心で過ごしてほしい」と参加者に呼び掛けた。

休んで生まれる価値

 「無職酒場」は、一般社団法人キャリアブレイク研究所(北野貴大代表理事、神戸市垂水区)が2022年6月から全国各地で不定期開催しているイベント。無職を否定的に捉えるのではなく、「休むからこそ生み出される価値」を見いだそうと、仕事のある人もない人も杯を交わして語り合う。

 大植医師も「無職酒場」に何度も参加し、研究所のメンバーと交流を重ねてきた。その結果、大阪市内での開催場所を相談され、幸教寺を勧めた。

 大植医師は、宗教を学ぶ医大生のオンラインサークルを運営したり、社会的な活動に取り組む寺院を学生と共に訪問するフィールドワークを行ったりと、宗教と医療の連携を模索する活動に取り組んでいる。

 幸教寺の石原住職と交流が始まったのは、フィールドワークで訪問したことがきっかけだった。大植医師は「『人を救いたい』という宗教者の願望に興味がある。救いに必要なのは技術ではなく、人間としての姿勢なのだと思う」と語った。

お寺の活動に親和性

 石原住職が「無職酒場」の開催を快諾したのは、幸教寺の活動理念に親和性を感じたからだという。

 「法要後にお酒が振る舞われるように、お酒は世間で潤滑油として用いられている。だから『悩んでいるなら、お坊さんと飲みに行けばいいじゃない』と言いたい」

 幸教寺では、まち歩きイベントや健康マージャン、ヨガ教室などを展開。さらに、地元社会福祉協議会と共同でまちの保健室=用語解説=を開催したり、司法書士の協力を得て終活に関わる事業を行ったりと、困りごとを抱える人に必要な支援が届くように心がけている。それぞれの活動を通じて、参加者の悩みやつらさに耳を傾け、仏教に基づいたより良い生き方を伝えているという。

(画像②:多様な事業展開について説明する石原住職)
多様な事業展開について説明する石原住職

 幸教寺の活動に参画する大阪市の真田貴仁さんは「組織は派閥や上下関係で生きにくい。地域と共に生きる楽しさが心の支えになっている」と語った。

 石原住職は「宗教法人が非課税であることに対する不満の声が聞かれるのは、お寺の持つ社会的価値が見いだされていないから。『無職酒場』を含むさまざまな活動を通じて、仏教やお寺が必要と思ってもらえるようにしたい」と力を込めた。

【用語解説】社会的処方

 社会問題や個人の心理的な困難に対する総合的な療法。医療や心理カウンセリングだけでなく、住居や雇用、教育、社会参加で解決を図る。1980年代に英国で始まり、2006年に保健省が推奨したことで、英国内100以上の地域で進められるようになった。日本では10年代から実施されるようになり、18年に定められた総合診療専門研修プログラムでは、患者を多角的に診る総合診療医が獲得すべきスキルとして位置付けられている。

【用語解説】まちの保健室

 学校の保健室のように、地域住民が健康などさまざまな問題を気軽に相談できる場所。図書館や公民館、ショッピングモールなどに定期的に設けられ、看護師らによる健康チェックや情報提供が行われる。病気の予防や健康の増進を目的に、日本看護協会が2001(平成13)年度から展開している。

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