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インタビュー

橋渡しインタビュー

障害のある人と切り開くファッションの新世界

2026年2月13日 | 2026年2月14日更新

 千葉県木更津市を拠点に活動するファッションデザイナーの鶴田能史さん(44)は、2015年(平成27)年にデザイン事務所「tenbo」(テンボ)を設立。国籍や年齢、障害の有無を問わず「誰もが楽しめるファッション」を掲げている。デザインだけでなく、社会課題にも積極的に関わる鶴田さんに、なぜ障害のある人に注目したのか、当事者に与える力や平和を表現する試みについて尋ねた。(飯塚まりな)

最先端を行けると確信

 赤と青の生地を使った派手なワンピース。テーマは「東日本大震災」で、思わず「どこのブランドなのか」と尋ねたくなるほど、鶴田さんは人目を引く服を作っている。

画像1:ファッションデザイナーの鶴田能史さん
ファッションデザイナーの鶴田能史さん

 千葉県君津市生まれ。03年に文化服装学院を卒業後、株式会社ヒロココシノ(東京都港区)に入社し、世界的ファッションデザイナーのコシノヒロコさんに師事した。

 独立を夢見ていたが「自分の発信したいことを、人に伝える力が足りていない」と感じ、昭和学院短大と服飾専門学校の講師を4年間務めた。

 のちに障害のあるモデルを起用しようと決めたのは、講師時代に出会ったある生徒の影響が大きい。福祉を学んだ経験のある生徒で、点字の必要性や、寝たきりの人に起きやすい褥瘡(じょくそう)などについて教わった。

 過去に、自分がデザインした服を車いすに乗る祖母に着てもらおうとしたが、座ったままの着衣が難しかったことを思い出し、需要があるのではないかと感じた。

 当時は障害のある人を対象にしたファッションブランドは存在しておらず、「障害×ファッション」で最先端をいけると確信した。「誰もやっていないことをしなければ生き残れない」という危機感もあった。

画像2:2024年の東京コレクションで、カラフルな衣装に身を包んだモデルたち
2024年の東京コレクションで、カラフルな衣装に身を包んだモデルたち

 テンボ設立と同年に、東京コレクションに参加。鶴田さんが声をかけた障害者4人がモデルとして初のランウェイを歩いた。これを機に、メディアから広く注目を集めた。

 「よく、障害者と出会う機会がないと言う人がいますが、それは出会おうとしていないだけ。自分の心の扉を開けたらたくさんの方に出会うことができます」

 鶴田さんは「当事者たちの気持ちを理解したい」と、積極的に情報交換を行う。時に意見がぶつかることもあるが、心が離れることはないという。それに行動を共にすれば、体が不自由な人が動きやすくするためのちょっとした工夫などを発見できる。

広島・長崎で平和テーマに

 戦後80年となった25年8月3日に広島で、同9日には長崎で、平和を願うファッションショー「Pray for Peace Collection 2025」を開催した。

 モデルは県内に在住する3歳から14歳までの子どもたち。平和の象徴である折り鶴を取り入れた衣装をまとって、大勢の観客の前を歩いた。ショーは平和への宣言やアーティストの演奏など、充実したプロフラムで構成されていた。

広島で開催された「Play for Peace Collection 2025」
広島で開催された「Pray for Peace Collection 2025」

 何度も回を重ねてきたが、始まったのは15年。テレビから聞こえてきた「終戦70年」の言葉に、鶴田さんの気持ちが動いたことがきっかけだった。さっそく広島を訪問し、現地の人たちと話したという。

 「被爆者の親族でもない自分が受け入れられるのか」と不安はあったが、原爆の歴史を知る中で、ファッションで平和を伝えたいと開催に踏み切った。

 「世界では、この瞬間にも戦争や紛争が起きています。私はそこで過ごしている人たちの気持ちを、自分にできる表現で代弁したいと思っていました」

 弱い立場にいる人たちに思いをはせることで、命を全うしなければ―。鶴田さんは、熱い使命感に駆られている。

幸せの土台づくりを

 テンボへの注文は後を絶たない。それは、「人」を主役にして製作しているからだ。

 一般的には大量生産された服の中から自分に合うものを選ぶしかないが、テンボでは着る人の思いや背景をじっくり聞いてから、唯一無二の服を作り上げている。

 「テンボの服を着ると幸せな気持ちになる」「生きていけると思える」。依頼者たちにとって、世界に一着しかない服が精神的な支えとなっている。

画像4アイキャッチ兼用:子どもたちの未来を願った唯一無二の衣装=2021年、長崎市
子どもたちの未来を願った唯一無二の衣装=2021年、長崎市

 今では鶴田さんは全国で講演を行っており、中高生に向けて話す機会がたびたびある。「差別や偏見がない世の中になってほしい」という思いで、声がかかれば積極的に依頼を受けているという。

 しかし、本来はもっと幼い子どもたちに向けて伝えていきたいとの思いを持っている。障害の有無など関係なく過ごせる環境づくりには、固定観念ができてしまう前の段階での教育が欠かせないからだ。

 「たった一日でいいから、子どもたちを幸せにする土台づくりが必要だと思います。教育にも力を注げる機会があればうれしいです」。そう笑顔で語った。

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