2026年3月17日
※文化時報2026年2月10日号の掲載記事です。
「読経で健康!」。京都府亀岡市の浄土宗稱名(しょうみょう)寺(和田真宜住職)で1月29日、そう銘打ったプログラムが行われた。お経を読むことで高齢者の健康増進を図ろうと、東京都健康長寿医療センター研究所と大正大学地域構想研究所BSR推進センターが連携して考案。お寺として初めて、稱名寺が継続して取り組むことに決めたという。(大橋学修)
「大きく手を広げて、おなかをふくらませて息を吸って」。この掛け声で、本堂に集まった参加者20人余りが準備体操を始めた。肩甲骨を回したり、首の筋肉をほぐしたりした後、舌や頬を動かして「あ~」「い~」と声を出す練習をした。

読経プログラムの共同研究者の一人で浄土宗法源寺(静岡県富士市)副住職の髙瀨顕功・大正大学准教授が木魚をたたき、参加者らは般若心経を3分ほどかけてゆっくり読経。休憩を兼ねた髙瀨准教授の閑話を挟み、2度目の読経を行うと、1度目よりもさらに大きな声が堂内に響いた。
読経後は客殿に移動し、お茶とお菓子をお供にして、よもやま話に花を咲かせた。参加者の奥村友さんは「1人ではなかなか声を出せないが、皆と一緒なら出しやすい。気持ちも晴れる」と表情を緩めた。
和田住職は、昨年9月に開かれた浄土宗総合学術大会でこの読経プログラムを知り、研究発表した髙瀨准教授に声をかけた。最初はお試しで1度だけ開こうと考えたが、準備を進めるうちに毎月開催できると確信したという。「すごく簡単にできて、終了後の茶話会でいろんな話ができる」と期待を示した。

第1回となった今回は、東京都健康長寿医療センター研究所の岡村毅副部長と、同センター研究員の枝広あや子医師による講演も行われた。岡村副部長は、医療とお寺の連携について解説。枝広医師は、誤嚥(ごえん)性肺炎が発生するメカニズムと読経プログラムの効果について紹介した。
読経プログラムの研究が始まったのは2022年。髙瀨准教授が東京都健康長寿医療センター研究所を訪問したとき、枝広医師に文字通り「首をつかまれた」のがきっかけだった。読経で常に声を出している僧侶は、喉の筋肉が発達しているかどうか知りたかったのだという。
その後は、浄土宗大本山増上寺(東京都港区)と真言宗豊山派大本山護国寺(同文京区)で実証実験を開始。参加した48人は、両本山で毎週プログラムを体験し、自宅でも10分間の読経をしてもらった。

7週間後、参加者の肺活量は300ミリリットル増加。飲み込むときの喉の動きも10%改善した。精神的健康や社会活動に関連する過ごし方の満足度も向上したという。
枝広医師は、誤嚥性肺炎になると絶食状態になり、栄養補給ができないと説明。病気に対抗しようと体がエネルギーを消費するため、体全体の筋肉量も減少し、寝たきりになることもあると指摘した。
「通常の会話ではトレーニングにならない。喉を広げた状態で腹式呼吸によって声を響かせる読経が効果的」と話した。

岡村副部長は、健康増進に投じられる国費は増えないとの見方を示し、「今ある資産で何とかするよう求められるはず。いろいろな宗派のお寺でプログラムを試したい」と力を込めた。